国内大企業でもコンテナの本番利用での事例が登場
2019年は、国内でも企業がコンテナを採用する状況の潮目が変わった年だった。「コンサバだった伝統的な大企業が、コンテナを大規模に使う事例が出てきました」と桂島氏は言う。
2018年頃までは、Web系のシステムや一部の先進的なアプリケーションでコンテナは主に採用されてきた。新しい技術にアンテナの高いエンジニアが中心となり、素早く試すためにコンテナを活用してきたのだ。それが2019年には、日本の伝統的な大企業でもコンテナの活用が始まった。率先して利用しているのは、大企業の中でもコンテナを活用する「ビジョン」を持っているところだと桂島氏は言う。
つまり、コンテナを試してみるのではなく、何に使うかの明確な目的があることが重要だ。コンテナを使いたいと思わせるような目的がない企業は、当然ながらそれを使う意味を見出せない。国内でも目標ある企業とそうでない企業では、コンテナの採用、活用に大きな隔たりが出ている。
とはいえ、コンテナを使っていない組織が、コンテナ技術を見極めた結果としてそれを採用していないわけではない。「採用していない企業では、コンテナが必要なモード2の新しいアプリケーションなりをまだ発見できていないのです」と桂島氏。コンテナが現時点で必要だとは思っていないが、コンテナを今後一切採用しないと決めたわけではないのは救いだろう。裏を返せばコンテナを採用していない、あるいは当面の採用計画がない企業は、新しいビジネスやデジタル化への取り組みに対し意識があまり高くない企業とも言えそうだ。
実際、コンテナをいち早く採用している「デジタル化への意識の高い大企業」は、国内で登場している。その1つがパナソニックだ。パナソニックではIoT家電のプラットフォームの中核に、AWSベースのコンテナ技術を採用している。IoT家電ごとにマイクロサービスを開発して、コンテナ化し運用するとともに、DevOpsとコンテナを合わせた活用もおこなっている。
また、よりコンサバだと思われがちな金融業界の事例としては、三井住友銀行と日本総研の取り組みがある。彼らは、さまざまなデジタル化プロジェクトを回すための共通プラットフォームにコンテナの環境を採用している。
もう1つ、ミッションクリティカルなシステムにおける国内事例もある。成田空港の新たな搭乗手続きである「OneID」の顔認証システムで、NECはコンテナを採用した。OneIDでは、バックエンドの仕組みをコンテナで実現しているのだ。空港での認証の手続きは社会インフラシステムの1つであり、実現するためにコンテナを高信頼で動かすためのノウハウを開発したとNECでは言う。このように日本においても大企業によるコンテナ活用の事例が出てきたことは、これまでの先進的なエンジニアなどが試してみる状況とは大きく変化してきていると桂島氏は言う。