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共創型DX

「生産性ロス、ビッグデータ幻想、PoCゴール」から脱却せよ!


 この連載では、日本企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を阻む要因を掘り下げ、経営者、顧客、従業員のための「共創型DX」の考え方を紹介する。第一シリーズでは「DXは生産性向上の最強の武器である」と題し、DXが生産性向上のうえでのイノベーションを生み出すことを紹介する。今回はその第二回となる。

第1の障壁:生産性後進国とデジタル後進国、ふたつの後進国問題

 日本経済におけるサービス産業のGDPシェアはいまでも70%を占め、将来的には米国並みの80%まで高まる可能性があります。また製造業のサービス経済化も進んでいます。一国の経済規模を象徴するGDPは[人口×一人あたりの生産性(=付加価値)]で計算できますから、日本経済の未来はサービス経済の生産性によって決まるといっても過言ではありません。

 ところが日本の生産性は驚くほど低いのです。とりわけサービス産業の生産性が低いことが問題です。デービッド・アトキンソン氏の評価によると、日本の労働者1人あたりの生産性は世界で29位と先進国の中では最低レベルであり、スペインやイタリアよりも低いのです。なぜこれほどまでに日本の生産性は低いのでしょうか。生産性後進国問題に直面しているのでしょうか。それは多くの日本人が生産性の本当の意味を知らず、生産性向上のことを「効率向上」のことであると勘違いしていることにあります。

絶対に知っておいてほしい生産性の本当の意味

絶対に知っておいてほしい生産性の本当の意味

 生産性向上とは、同じ投入リソースで大きな成果を得るか、または、同じ大きさの成果をより少ない投入リソースで得ることです。サービスやオフィスの仕事の生産性向上は、オートメーションによって仕事が滞りなく流れるようにすることで行います。仕事のオートメーションとはなにか、どのようにオートメーションすれば良いのかについては後の回で詳述します。しかし「生産性向上=効率向上」だと思ってしまうと、仕事が滞りなく流れるように工夫することを忘れてしまい、分母の効率化であるコストカットばかりを進めてしまうことになります。

 象徴的なのは働き方改革で奨励されている「時短」です。仕事の量が変わらず、仕事の進め方を工夫することなしに「時短」を進めればどうなるのでしょうか。はみ出た仕事を別の場所でやらざるをえなく、サービス残業を強いられることになります。これでは「働き方改革」がうまくいくはずはありません。成功のかぎは、生産性向上とは仕事が滞りなく流れるように工夫することであることを理解し、仕事のオートメーションを構想し設計することにあります。

日本では起こすことができなかった「IT革命」

 米国でDXの進展が著しいことには理由があります。1990年代半ばに米国企業が率先して起こした「IT革命」は、米国企業の生産性向上からの業績向上におおいに貢献しました。米国企業にとって「IT」が意味することは、業績向上を目的にした「IT経営」のことであり、その本質は、仕事のやりとりをデジタル化することによる仕事のオートメーションのことだったのです。

 通常、「IoT(Internet of Things)」の「Things」を「モノ」と訳すことが一般的です。しかしこの連載では、IoTが、あらゆる「ヒトとモノ」が生み出す「コト」をデジタル直結するプラットフォームになっていると考えますから、「コトのインターネット」と呼ぶことにします。例えば誰かがメールを送信するという「コト」を起こせば、受け取ったひとがそのメールを読むという「コト」を起こすといった具合です。または機器に搭載されたセンサーが機器の故障を察知して、集中監視センターに機器の故障を通知するという「コト」を起こすということです。

 「IT経営」の本質は、仕事のオートメーションによる生産性向上を実現し、業績を向上させることです。そしてIoTはオートメーションの感覚器の役割を担っています。IoTの爆発的な社会への浸透によってさまざまな「コト」のやりとりのオートメーションが可能になりました。つまり米国におけるDXとは、IoTが可能にした「IT経営」の延長線上にある概念だったのです。

 ところが日本では「IT革命=ITによるオートメーション」を起こすことができませんでした。日本企業のIT活用はいまだに基幹業務のIT化という業務効率化が主であり、業績向上を目的とした「IT経営」の概念がとても希薄です。多くの日本人が、DXの前提となる「IT経営」の概念を知らないし、「IT経営」の実践に必要な訓練をやったことがないのです。知らないことは想像できないという問題がここにもあるのです。

次のページ
DXとは生産性向上の最強の武器である

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宗 雅彦(ソウ マサヒコ)

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