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コロナ禍による決算業務の危機、克服するための「リモート決算」とは? ブラックライン 古濱氏に訊く

 コロナウイルス問題で、企業の「決算業務の深刻化」が浮上してきている。テレワークの導入は開始したものの、経理の部門だけはリモート化できないと企業も多い。さらにグローバル企業の場合は、世界中の各拠点の会計上の集約も現状では困難を極める。こうした中、経理・財務部門の出社を必要としない「リモート決算」が注目されている。かねてから、モダンアカウンティングを提唱し、経理業務のクラウド化を牽引してきたブラックライン日本法人社長の古濱氏に話を訊いた。

 新型コロナウイルスの感染拡大により、これまで経理担当者と監査人の手作業に大きく依存してきた決算業務の負担が増大している。そんな困難な環境下にあって、出社することなく決算対応を完結できるソリューションが「リモート決算」である。この分野を長年牽引してきたブラックラインは「モダンアカウンティング」を掲げ、経理・財務部門のデジタルトランスフォーメーションを支援する企業である。2020年5月時点で、同社は武田薬品工業、Kimberly Clarkなどの世界3,000社超の優良企業をユーザーに抱える。今、SaaSのリモート決算ソリューションを導入するべき理由について、日本法人社長の古濱淑子氏はこう語る。

上場企業の決算の現状

――東京証券取引所のルールでは、決算短信は45日以内に開示することが義務付けられています。日本の上場企業は3月決算の企業が大多数なので、例年であれば該当企業は5月15日が期限ですが、今年はどんな状況でしょうか。

古濱:緊急事態宣言を境に、テレワークに移行せざるを得なかった企業は多いと思います。ですが、すべての人が家でできる仕事をしているわけではありません。経理部門の仕事は家ではできないことが多い業務の典型例です。CFO協会が実施した「新型コロナウイルスによる経理財務業務への影響」を調べた結果によれば、約7割が2月から4月にかけてテレワークを実施したと回答していますが。約4割が出社の必要があったと回答しています。(図1)

 なぜ決算業務で完全なテレワークに移行できないかというと、主に3つの理由があります。一つは海外子会社の閉鎖などで、データ収集が遅れていることです。国内に多くの拠点を持つ企業にとっても、この課題は無関係ではありません。2つ目が押印や書類の印刷があるためです。会社のファイルを見ないと紙の資料を確認できないような場合ですね。最後が監査対応です。通常であれば、監査は監査人が監査先企業に数週間常駐して対面で行いますが、メールで行わなくてはならなくなり、コミュニケーションが複雑になっているのです。

 この3つが足かせとなり、東証に上場している企業の16%に相当する約400社(2020年4月末時点、その後も増加)が決算遅延あるいは未定という状況です。決算が遅れる場合も、経理担当者は出社して準備を進めていました。完全にリモート決算ができた会社はごく一部です。

図1:緊急調査からみる今年2月〜4月の決算の実態 (出典:ブラックライン)

――日本企業の経理担当者は現在も対応を進めていると思いますが、決算発表が遅れそうな企業に対し、当局はどんな救済措置を用意していますか。

古濱:世界各国それぞれの事情に応じて特例措置が設けられています。投資家向けの速報開示を目的とする決算短信とは別に、金融証券取引法では有価証券報告書を3カ月以内に提出することを定めています。金融庁は、3月決算企業の有価証券報告書の提出期限を9月末に延期するべく、内閣府令を改正しました。
リモート決算への対応は日本企業にとってだけの課題ではありません。海外の企業は12月決算のところが多い分、日本企業とは事情が違いますが、リモート決算に関する課題意識は同じです。The Wall Street Journalでは、「リモート決算に対応できなければ、企業成長のスピードを阻害してしまう」など、危機感を募らせていて、決算業務の負担軽減は世界的に共通の課題です。

図2:各国の決算とコロナ影響による特例措置 (出典:ブラックライン)

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コロナ以前からあった決算の課題

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この記事の著者

冨永 裕子(トミナガ ユウコ)

 IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタン...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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