在宅エージェントの可能性
道下:前編ではこれからのコンタクトセンターのビジネスモデルについて伺いましたが、アフターコロナのコンタクトセンターのあり方を考える上で避けて通れないのは、オペレーターの在宅エージェントを認めることではないでしょうか。理屈では必要とわかるけれども、ウチでは無理という企業の懸念はセキュリティや教育にありそうです。教育についてはWalkMeがお役に立てると思いますが、セキュリティの問題を解決し、在宅エージェントへシフトすることは可能ですか。
出水:海外の調査結果を見ると、米国では当たり前のように在宅エージェントを実現しています。米国の108のコンタクトセンターを対象に在宅率を尋ねたところ、コロナ前の1月中旬は14%だったのが4月中旬には70%超で、6月以降の継続意欲も堅調です。一度始まった流れは止められないでしょう。
道下さんが指摘したセキュリティと教育だけでなく、できない理由を挙げ始めるときりがありません。一方で、国内のコンタクトセンターで働く数10万人全員が在宅になるかというと考えにくい。であれば、できるところから始めればいいと思います。米国では全員が在宅エージェントのコンタクトセンターもあります。日本で同じように進まないのは企業体質で、テクノロジーの問題ではありません。最大の懸念は個人情報の持ち出しですが、モラルの問題で安全な仕組みを作ることの難しさが問題なのではありません。担当者がもし個人情報漏洩が起きたらどうしようと思う気持ちはわかりますが、最終的には企業経営者の決断力だと思いますね。
道下:過去の出水さんの経験を踏まえて、在宅でのお客様対応は可能だと思いますか。
出水:間違いなくできると思います。私が社長を務めたことのあるスカパー・カスタマーリレーションズ(SPCC)では北海道の拠点で既に在宅の取り組みを始めています。アフターコロナで在宅エージェントはもっと増えるでしょう。
道下:アフターコロナもありますが、日本の少子高齢化を考えると、シルバー世代や子育て世代が在宅でできる仕事が増えるのは日本社会の生産性向上への貢献が大きいと思います。
出水:目指している姿は、高度なオペレーションをお客様に提供することです。単純な問い合わせ対応はボットでできるので、人はそれ以外のことをやるべきです。その時に必要になるのが専門知識です。定年後は悠々自適の生活を送ろうとしている人に、専門職として働いてもらうことを考えると、報酬も今までのような水準で高度な対応を求めるのはおかしい。見直しも必要になってくると思います。
道下:WalkMeを見たお客様が言っていたことの一つに「高齢者雇用に役立つ」があります。高齢者の方には今までの経験や専門知識を活かしてほしいのですが、デジタルツールを使うことは苦手としているケースが多い。WalkMeであれば使い方を覚えることの心配がない分、専門知識がある方の採用を積極的に行うことができると考えています。在宅エージェントに加えて、そんな例が出てくればいいと思います。
出水:営業をやってきた人は専門知識が豊富ですからね。コンタクトセンターの高度な知識を持った人が営業へ転換するケースも出てくるかもしれません。