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泣き寝入りで諦める必要なし ネットへの書き込みは本当に「自由」なのか

edited by DB Online   2020/07/29 09:00

ネット上の書き込みに泣き寝入りする必要なし

 ご覧の通り、この判決ではプロバイダに情報開示を命じる条件として、1.書き込まれた本人が開示を求め、2.何らかの権利侵害があり、3.匿名や具体的な根拠を示されていないことが、判断の基準として示されたわけです。

 もちろん、これらは、この事件において示されたもので、どんなケースにも適用されるとは限りませんし、場合によっては他の条件が付けられることもあるかもしれません。しかし少なくとも、自身の権利が阻害されるような書き込みをされた場合には、書き込んだ者を相手に訴訟を提起するために、プロバイダに情報開示を求められる、そんな可能性が充分にあることをご理解いただけたかと思います。

 逆に言うと、ネットの匿名性を過大評価して、論拠のない書き込みを行って他人の権利を侵害するようなことがあれば、相手側から訴えられる可能性があり、その際にはプロバイダも、書き込んだ者を守り切ることは難しいと言えるのではないでしょうか。

 SNSであれ、掲示板であれ、昨今は、世界中から様々な書き込みがなされ、その中には論拠のないウソと言っても良い記述が溢れている状態です。多くの無垢な読者達が、それを鵜呑みにして、情報を拡散したり、標的になった法人や個人を様々な形で追い込む例も多々あります。書き込む側はネット上のことだからと軽々しく投稿をすべきではありませんし、逆に書き込まれた側は、これを不可抗力とあきらめてしまう必要もないということです。

 そうした認識なく、ネット上の“自由”な書き込みを許してしまうことは、ネットへの人々の信頼を失墜させ、正しい情報発信や受取もできなくなるという、大きな“不自由”を招くことになります。そうしたことに是非、皆が気づいてほしいと考えています(了)。



著者プロフィール

  • 細川義洋(ホソカワヨシヒロ)

    ITプロセスコンサルタント 東京地方裁判所 民事調停委員 IT専門委員 1964年神奈川県横浜市生まれ。立教大学経済学部経済学科卒。大学を卒業後、日本電気ソフトウェア㈱ (現 NECソリューションイノベータ㈱)にて金融業向け情報システム及びネットワークシステムの開発・運用に従事した後、2005年より2012年まで日本アイ・ビー・エム株式会社にてシステム開発・運用の品質向上を中心にITベンダ及びITユーザ企業に対するプロセス改善コンサルティング業務を行なう。現在は、東京地方裁判所でIT開発に係わる法的紛争の解決を支援する傍ら、それらに関する著述も行なっている。 おもな著書に、『なぜ、システム開発は必ずモメるのか? 49のトラブルから学ぶプロジェクト管理術』 日本実業出版社、『IT専門調停委員」が教える モメないプロジェクト管理77の鉄則』。

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