「3密検知システム」を導入した石川記念会HITO病院
「密集緩和施策を早期に実施できた」。そう話すのは、石川記念会HITO病院(愛媛県四国中央市)DX推進課の村山公一氏だ。同病院では、密閉・密集・密接のいわゆる3密を回避する施策のためにIoT(Internet of Things)による「3密検知システム」を導入した。前例のない感染拡大対策に素早く対応できたのは、病院スタッフによってシステムを内製開発したからだ。
HITO病院が導入したIoTシステムはシンプルな仕組みだ。呼気によって上昇する二酸化炭素(CO2)の濃度をセンサーで計測し、混雑を検知したらLEDライトを点灯するなどして通知する。椅子の配置などを見直し、外来の患者に混雑緩和を促したり、換気するタイミングの目安に使っている。
同院では外来患者の対応に無線の呼び出しアラームを使っていて、外来患者は受診や会計を待合いスペースで待つ必要はない。この呼び出しアラームと3密検知システムを合わせて使えば、例えばCO2濃度が高くなりつつあれば、アラームを手渡す時に人の少ない場所で待つよう案内するといった対応ができる。看護師が集まる場所などにも設置し、混雑を避けながら働きやすい環境づくりに取り組んでいる。
ノーコード開発で内製
IoTシステムを内製開発したHITO病院だが、システム開発のスペシャリストがいるわけではない。プログラミングなしにシステム開発ができるノーコード開発ツールを使ったのだ。HITO病院が3密検知システム開発は、アステリアが提供するIoTシステム開発用ソフトウェア「Gravio」を使って開発された。センサーなどIoTデバイスからデータをGravioが受け取り、別のシステムやデバイスなどに連携させてシステム開発ができる。
コーディングが必要ないノーコード開発ツールだけあって、Gravioの操作は簡単だ。パソコンにインストールしたGravioを起動したら、センサーをコンピューターと通信させたり、取得したCO2濃度データをグラフにしたりなど、ほとんどの設定は画面の指示に従ってマウス操作するだけでできる。キーボード入力が必要なのは、センサーを登録する際に「2階CO2センサー01」などと名前をつける時ぐらいだ。HITO病院でも初めてGravioを使ったが、特別なサポートを受けることなく3密検知システムを開発できたという。
CO2濃度センサーには、アステリアが用意したGravio専用デバイスを使った。Gravioには設定済みのデバイスが用意されていて、ソフト利用者は貸し出しサービスを使える。月額2万円(税別)のソフト利用料(Gravio Standardの場合)を支払えば、20台までデバイスを無償で借りられる。アステリアGravio事業部長の垂見智真氏は、「『業務システムは長い開発期間と高い開発費が必要』と考える企業は多いが、すでにそういう時代ではなくなっている」と話す。