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DX銘柄2020にも選定されたAGCのクラウドジャーニーとは

edited by DB Online   2021/02/17 08:00

 経済産業省が選定するDX銘柄2020に選ばれたAGCでは、全てのITシステムを5年かけAWSに移行した。基幹系システムから全システム移行を果たし、運用も統一まで成功させたプロジェクトの内容が株式会社BeeX主催のイベントで語られた。

 2018年7月1日に社名を「旭硝子株式会社」から「AGC株式会社」に変更した同社は、100年以上の技術革新の歴史で培った技術力を強みに、ガラス事業に加えディスプレイや電子部材などの電子事業、クロールアルカリやフッ素、ライフサイエンスの化学事業、他にもセラミックスなど幅広い製品、サービスをグローバルに展開している。

 1907年の創設時、世の中では新しい取り組みだったガラス製造に果敢に取り組んだAGCの創業精神は、”易きになじまず難きにつく”というもの。これはいまなお引き継がれチャレンジを推奨し賞賛する社風が根付いている。そしてAGCではブランドステートメント “Your Dreams, Our Challenge”を制定し、独自の素材やソリューションの提供に取り組んでいる。

DXの取り組みを支えてきたAGCのクラウドジャーニー

 AGCグループでは最新のデジタル技術を活用し、顧客への新たな価値の提供を目指している。そのために2017年には、専門組織のDX推進部を発足し全社横断的な取り組みを行っている。「こうした取り組みが評価され、2020年8月には(経済産業省がデジタル技術を前提としたビジネスモデル・経営変革に取り組む上場会社を選定する)DX銘柄2020に選定されました」と言うのは、AGC 情報システム部 ITコンピテンスセンター デジタル・イノベーショングループ マネージャーの瀧田美喜子氏だ。

AGC
情報システム部 ITコンピテンスセンター デジタル・イノベーショングループ マネージャー 
瀧田 美喜子氏

 AGCがDXを推進するために、情報システム部ではさまざまなITプラットフォームの提供を行っている。そのためにAGCでは、全てのITシステムを5年かけAWSに移行した。コスト削減とBCP対策を目的として、2014年9月にまず基幹系システムから開始する。「基幹系システムができるのであれば、他も大丈夫という安心感を生み出す効果を狙ってのものでした」と瀧田氏。基幹系システムの移行を成功し、後はシステム更新タイミングで次々とAWSに移行を実施、2018年11月には全てのシステムの移行が完了する。

 当時部署内には、AWSに詳しいエンジニアは少なかった。それでも多くのシステムの移行を成功できたのは、インフラサービスを標準化して組み合わせ、カタログ化して提供したことが大きく貢献している。これによりシステムごとにインフラ構成を一から設計せずに、ある程度決まった形を提供して構築リードタイムを減らし、運用の統一化も図れるのだ。カタログ化されたAWSのクラウドインフラを、AGCでは「Alchemy(アルケミー)」と呼んでいる。Alchemyの取り組みは、情報システム部にとってはサービスの内製化の始まりでもあった。

 クラウド移行は成功し、当初目標のコスト削減とBCPの強化を実現する。Alchemyでは、副次的な効果も生まれた。AGC社内でクラウドが当たり前となり、事業部門がクラウドを利用したいとなれば情報システム部にまずは相談する体制ができ上がったのだ。

 そしてAlchemyで守りのIT基盤の利用が拡大すると、次に攻めのIT領域で自由なチャレンジができる環境の要望が生まれる。そこで、2017年に第2のクラウドサービスとして「Chronos(クロノス)」の提供を開始する。これは利用者が自由にPoCを実践できる環境で、アジャイル開発を可能にし、セキュリティ面は標準化しカタログ化することで担保した。

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 「インフラ基盤を標準化することで、ユーザーにスピーディーにAWS環境を提供できます」と瀧田氏。Chronosを利用して生まれた、新しいサービスがいくつもある。その1つが物流IoTの取り組みだ。一般的に、国内で流通しているガラスパレットのうち、、毎年1割程が回収不能となっている。AGCではSigfox通信デバイスを活用しIoTの仕組みを構築、パレットの位置を特定できるようにし輸送経路の可視化を実現した。これによりパレット紛失を半減化しコスト削減しただけでなく、パレットの位置を輸送計画に反映し輸送の効率化を図り、CO2排出量削減にも取り組んでいる。

 利用部門によるIT活用が進んだことで、さらにデータ活用の要望が生まれた。「データドリブンな経営の実践を目指すには、データの収集や保管に労力を割くのではなく、簡単にデータの一元管理をするプラットフォームでもっとデータ分析に時間を使えるようにすることが重要です」と瀧田氏。そこでAGCではChronosの基盤を進化させ、データレイクの基盤となる「VEIN(ヴェイン)」を構築、データ活用基盤サービスを標準化して全社に展開する。重要だったのが、AGCにとってどのようなデータ活用基盤が必要かを利用部門と一体になり考え構築することだった。さらにサービスを構築した後に、部署や事業部に固有のナレッジとして止めることなく、組織間のデータ活用を進めることも必要だった。

 このように基幹システムのクラウド移行から始まったAGCのクラウドジャーニーは「クラウドの自由度の高さを実感し、新たな価値を創造するリフトからシフトの局面を迎えています」と瀧田氏。クラウドの良さはすぐに挑戦できるスピード感とさまざまな変化に対応するフレキシビリティ、さらに失敗してもやり直せるレジリエンス(回復力)にある。このクラウドの良さを実感できたのは、クラウドジャーニーを共に歩んでくれたパートナーのBeeXの存在があったからだとも言う。

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著者プロフィール

  • 谷川 耕一(タニカワ コウイチ)

    EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーター かつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリストとして、クラウド、データベース、ビッグデータ活用などをキーワードに、エンタープライズIT関連の取材、執筆を行っている。

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