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スーパープレイヤーに頼らない DX時代の強い組織の作り方、動かし方

「あるべき姿」議論で良質な態勢を作れ

顧客についてのガチ議論が良質の態勢を作る

 とはいえ「経営や営業組織と、顧客起点で対話せよ」といっても、具体的にどうすればいいのか? また、対話した結果をどう活かせば「経営や営業組織と良い態勢を作る」ことにつなげられるのか? 実は、ここにもある程度、お作法がある。

 ざっくり言えば、以下のようなタスク群でアプローチしていく。

a. 経営インタビュー

 のっけから恐縮だが「わが社のマーケティングは顧客に対してどうあるべきか」と経営にストレートにぶつけても「なるほど、それでいきます!」と膝を打つような示唆をもらえることは稀だ。通常、あなたの業務上の悩みに対して、経営は同じ目線で考えてくれたりはしない。それこそ「顧客の信頼が第一」や「売上貢献よろしく」くらいのアドバイスしかもらえないと思ってよい。それでも、経営と対話することの意義は二つある。

  • 改めて、自社のミッションやビジョン、中長期の戦略を「顧客にもたらす価値」という観点で捉え直せる。その根底にある経営の想いも把握できる。前述した4P/4Cに通じることでもあるが、プロモーションは、そもそも自社のミッションやビジョン、戦略に沿ったものでなければならない。極端に言えば、これらを踏まえないプロモーションは、企業として評価できない。

  • バックアップの約束を取り付けられる。「今のマーケをこのまま続けてはヤバいので、営業組織にも協力を仰ぎ、顧客起点な組織に変えて会社にもっと貢献したいと思ってます」と言われて、「何を言ってるんだ。いますぐやめろ」とか「やる必要ない」とか言う経営者はいない(はずだ)。

 「もし営業組織が協力してくれなかったらその時はサポートをお願いしたい」「途中で暗礁に乗り上げたら相談に乗ってほしい」などの約束を最初の時点で取り付ける(もちろん記録に残しておく)。これが「良い態勢」作りの第一歩となる。

b. 関係者インタビュー

 関係者とは、マーケティング部門の中だけを指さない。顧客に関わる人全般を指す。営業部門はもちろんのこと、商材の主管部門、カスタマーサポート、カスタマーサクセスなどだ。できれば、各部門のトップ、自分たちともっとも接点のある担当者、その両方に、インタビューするのが望ましい。

 経営インタビュー同様、これらの部門の担当者が、最初からマーケティング部門の視点で何か有用なアドバイスや示唆を与えてくれる、と思ってはいけない。聞けるのは、彼らの顧客に向き合う想い、わが社が顧客に選ばれる理由(または選ばれない理由)、そして「うちのマーケはここがイケてない」「やってる意味がわからない」といった辛辣な批判だ。噴出する批判から目を背けたり「そうはいっても」と反論してはいけない。グッとこらえて、まずは受け止めてほしい。これには理由が3つある。

 態勢の質は、自分と違う視点や価値観を持つ者同士がガチで議論し、お互いを理解することで、高まっていくからだ。混乱を経なければ、チームはまとまらない(気になる方は「タックマン・モデル」でググってほしい)。それには、まずは相手の主張を傾聴するところから始める必要がある。

 大仰な言い方をすれば、双方に正義があり、それぞれの正義が拠って立つ背景が異なるからだ。これらをこの段階ですり合わせるのは難しい。こちらの正義を振りかざして相手と争ってはいけない。相手にも正義があることを忘れてはいけない(このことは今後の連載で「抵抗勢力との向き合い方」という視点で詳しく触れる)。

 最初のタイミングで「批判を浴びる儀式」をせずに、自分たちだけで議論を始めたり、何かを決めたりしても、後になって「ちょっと待った」「意味が分からない」と言われるのが明白だからだ。どのみち混乱するなら、最初にありがたく批判を頂戴し、検討のインプットにしてしまえばいい。

 ちなみにこの段階で、何人かの顧客にインタビューするのも、とても有効だ。ポジティブ、ネガティブに関わらず、自社や商材に対する意見を丁寧に聴取することで、今後の議論の重要なインプットになる。

c. 討議インプット、論点の整備

 経営や関係者から、様々なインプットをもらったら、いよいよ態勢作りの議論に向けた準備だ。先に述べたチェックリストの1~3番、つまり「マーケティングで何を実現したいか」「顧客が企業や商材に求める価値」「顧客が購買するまでの王道プロセス」を決め切り、経営や関係者と合意するには、綿密な議論の準備が必要だ。

 顧客起点で考えよ、といっても、様々な立場や想いがあることは先に述べたとおりだ。どのように議論を進めれば、全員が「よしそれでいこう」と納得するか、を議論の前に決める。もちろんケースバイケースだが、代表的な3つのアプローチをご紹介しよう。

 ひとつめは「課題分析型アプローチ」だ。事前のインプットに真っ当な批判(=わが社のマーケティングにおける課題)が多く「これらを解決すれば、1~3番を満たせそうだ」と言えそうであれば、このアプローチが有効だ。通常はこのアプローチが多いのでは、と推測する。事前に集めた課題をこの段階で丁寧に分類(組織、人、業務、ITなど、いくつかの軸が考えられるだろう)し、それぞれの課題の因果関係を整理していく。Aという課題は、Bという課題が原因になっている、といった具合だ。

図1「課題の相関図」(イメージ)
図1「課題の相関図」(イメージ)

 ここまで準備を終えた状態で、関係者との議論を始めれば、さらに追加の課題を誘発することができるし、課題の奥にある真因を関係者が深く理解した状態で、1~3番を決めるための議論に取り掛かることができる。

 ふたつめは「アイデア持ち寄り型アプローチ」だ。もし「うちのマーケはもっとこうしたほうがいいんじゃないかな」「我々の商材を買ってもらいたいのはこういう顧客だ」といったポジティブなインプットを多く得られたのなら、このアプローチが有効だ。準備段階では、こうしたアイデアの粒度を揃える努力をする。

 具体的には、参加者に、定型フォーマットで、改めてアイデアを形にしてもらうよう宿題を出す。かたやテキストに数行、かたやパワーポイント数十枚、という状態でアイデアを持ち寄っても、同じ土俵で議論ができないからだ。アイデアの切り口やボリュームを揃えることが大切だ。

 切り口は、関係者のレベルに合わせる。1~3番の案をダイレクトに投げかけて各自がアイデアを持ち寄れるならベストだが、そうでなければ、「私が考える『理想の顧客』」「成功/失敗した顧客体験」など、事前に集まったアイデアの種をもとに、アイデアの切り口を、知恵を絞って考えてほしい。
ボリュームは「一枚絵」がいい。パワーポイントでも模造紙でもいいが、アイデアを横並びで眺めることができれば、さらに深い議論ができる。「これとこれを組み合わせると、もっとクールなアイデアになりそうだ」といった具合だ。

 最後は「ゼロスタート型アプローチ」だ。レアケースかもしれないが、まだマーケティング組織が存在しない、既存の組織を見直すだけではどうにもならず組織の在り方を根本から組み替えなければならない、そもそも会社の方向性が定まらずマーケティングとか言ってる場合じゃない、などのケースには、このアプローチにチャレンジしてみてほしい。こういうケースには、課題分析型もアイデア持ち寄り型も通用しづらい。双方とも現状の「イケてなさ」から出発する対処療法的な進め方だからだ。

 この場合は、組織の組成に関わるような企業の中枢メンバーを集めて議論するしかない。「なぜ我が社は顧客から選ばれているのか」「そもそも我が社はどこを目指すべきか」「翻って、わが社のマーケティングはどうあるげきか、どこを目指すべきか」などの抽象度の高い議論をし、「マーケティングで何を実現したいか」「顧客が企業や商材に求める価値」「顧客が購買するまでの王道プロセス」を決めていくしかない。

 準備できることは、議論の順番や(ある議論のアウトプットが次の議論のインプットになるように)と、議論の結果を整理するためのフレームワークを決めておくことだ。

図2「我が社はどこを目指すべきか、を議論した際のフレームワーク
図2「我が社はどこを目指すべきか、を議論した際のフレームワーク
図3「議論の結果をまとめた戦略ストーリー」<br />  「熱烈なFAN」のあたりが「マーケティングで何を実現したいか」のインプットになる。
図3「議論の結果をまとめた戦略ストーリー」
「熱烈なFAN」のあたりが「マーケティングで何を実現したいか」のインプットになる。

 ここまでくれば、あとは関係者と議論だ。「なぜ議論したいのか」「何を決めたいのか」「どういう順序で議論したいのか」「出席者に何を期待しているのか」が明確になっていれば、議論を恐れることはない。議論は準備が8割なのだ。

 これは、マーケティング組織だけの問題ではなく、会社として顧客に感じてほしい価値を言語化する、ひいては売上に直結する大事な議論だ。「出たくない」「宿題をやりたくない」とゴネる関係者がいれば、経営に助け舟を出してもらおう。

d. マーケ組織のあるべき姿討議

e. あるべき姿に至るための施策策定

f. 「あるべき姿」の明文化

 議論の順序は、必ずd、eだ。物事は、まずゴールを決めてから、そこに至る道のりを決める。「どうなったらゴールといえるか」を決めないまま始めるスポーツがないのと同じだ。「なぜやるのか(=ゴール)」、そのためには何をどうすればいいのか、の構造だ。ここでいう施策とは、アイデアを「これならやれそうだ」という状態に練り上げたものだ。この段階では、そこまでカッチリしたものでなくても、この後に、4番以降を決め切っていくためのインプットになればよい。

次のページ
討議の順番やまとめ方の粒度

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谷風 公一(ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズ)(タニカゼコウイチ)

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