前回、スーパープレイヤーに頼らずに強い組織を作り、維持するためには「企画の質」だけでなく「態勢の質」が極めて重要であることをお伝えした。いくら「いい内容だ」「よく練られている」と評価されるような企画を作っても、「じゃ、がんばってね」と他人事にされては元も子もない。よい企画は、よい態勢があって初めて成立する。「私の企画」より「私たちの企画」のほうが、多くの意思が絡まりあうことで、深みを増し、熱量が高く、かつ実現可能なものになるのだ。 とはいえ、多くの関係者をうまく巻き込んで企画を作り、共に始め、態勢を維持し続けながら、成功させるのは至難の業だ。マーケティングの領域においても同様である。この連載では、デジタル化を織り込んだナイスなマーケティング組織を作り、あるいは改革し、予測不能な事態になってもうまく運営し続けるためのヒントをお伝えしていく。「スーパープレイヤーに頼らずに」ということだ。今回は、組織作りや改革の足がかり、組織の「あるべき姿」作りにフォーカスする。
マーケティング組織の「ヤバい」度を測る
あなたの会社のマーケティング組織は、どれくらいヤバいか?
以下のリストを見て、自分の組織にどれくらい当てはまるのか、チェックしてみてほしい。そもそも具体的なイメージがつかないとすれば、それは「当てはまらない」ということだ。
【態勢の観点】
1.「マーケティングで何を実現したいか」を経営と握っている。
2.「顧客が企業や商材に求める価値」を関係者間(他組織も含む)で一致させている。
3.「顧客が購買するまでの王道プロセス」を関係者間で一致させている。
【企画の観点】
4.推進するプロモーションが、実現したいこと、価値、王道プロセス(態勢の観点1~3)に沿っている。
5.プロモーションの成果が、実現したいこと、価値、王道プロセスにどれくらいミートしたか、表明できる。
6.関係者の役割やコミュニケーション手段が明文化されている。
7. プロモーションを推進するために必要な業務、システムが定義され、関係者が理解・納得して運用している。
8.業務、システムを関係者間で定期的に見直している。
9.世の中のトレンドを押さえている(社会情勢、市況、ITなど)。
ひとつも当てはまらないとすれば、あなたのマーケティング組織はそうとうヤバい。4番以降に当てはまるものがあるとしても、1~3番が当てはまらない状態ならば、それは、場当たり的なプロモーションや運用になっているのではないか、と推測できる。日々、プロモーションに知恵を絞り成果を出しているはずなのに、毎晩遅くまで働いているはずなのに、経営から「これでわが社の何がよくなったのか」「なぜそんな高額なツールをいつまでも使っているのか」と、営業組織から「マーケが何をやっているのか、外からよく見えない」「営業活動の役に立っていない」と言われてはいないか。これもそうとうヤバい。
1~3番が当てはまっていて、4番以降が当てはまらない、1~3番とのつながりをうまく描けない、ということであれば、1~3番がうまく仕上がってない可能性がある。これもヤバい。要は、1~3番と4番以降がきっちりつながっていなければ、意味がない。
4番以降は「何をやるのか」「どうやるのか」にフォーカスしたもの、1~3番は「なぜそれをするのか。それをやることが良い、となぜいえるのか」、つまり4番以降の動機付け、という因果関係になっている。これこそ企画と態勢の関係だ。1~3番が仕上がっていて、かつ4番以降のインプットになっている状態でなければ、組織に「ヤバさ」がある、ということだ。今、かろうじて持ちこたえていても、予測不能な事態があった際、途端に組織が崩壊しかねない。だから、まずは1~3番をきちんと仕上げなければならない。
どうすれば、経営や関係者(特に関係の強い営業組織)と、マーケティングで実現したいこと、顧客が求める価値、顧客の王道プロセスを一致させ、良い態勢を作ることができるのだろうか。