著名人にしゃべってもらえば人は集まるが……
以前、あるセミナーに登壇した際、参加者の方から「デジタルマーケティングにコンテンツ作りは必須ですか」というご質問をいただいた。その時は「必須。コンテンツに対する顧客の反応の蓄積がデジタルマーケティングを支える」と回答したが、最近、この質問には、もうひとつ重要な論点が織り込まれているのではないか、と思うようになった。それは「著名人による講演などの『借りものコンテンツ』を組み合わせれば、新規リード(顧客候補)を獲得することはできる。果たして、自分たちでゼロからコンテンツを作る必要があるのか」である。
確かに、著名人の基調講演、既存ユーザーによるプレゼンテーションや座談会、パートナー企業によるハンズオンセミナーなど、自分たちがゼロから作っていないコンテンツを組み合わせて「お好きなものをどうぞ」とするビュッフェスタイルのイベントは人気があり、多くの集客を見込める。顧客の連絡先さえ取れれば、後続のマーケティングや営業活動に活用できるので、私の周囲のマーケターたちの多くが、このタイプのイベントを開催する。最近は、事前収録したビデオを組み合わせて、オンラインでこうしたイベントを運営するためのツールやノウハウが確立している。かつてのように、巨大なイベント会場を1年前から予約し、手厚い運営体制や分単位の進行表、大量のパンフレットやノベルティを準備し、当日はトラブルが起こらないか冷や冷やしながらイベントを取りまわす、そんな必要はない。「じゃあオンラインビュッフェでいいじゃないか」と言いたいところなのだが、どうもモヤモヤした気持ちが残る。「それだけやるのでいいんだろうか」と周囲のマーケターに問いかけると「いや、必ずしもそうではないと思うが、なぜそうではないか、言語化できない」と漏らす方もいる。
そこで、いったん世の中のコンテンツのタイプを俯瞰してみたい。オンラインビュッフェはどういうタイプのコンテンツなのか、そうではないタイプのコンテンツにはどういうものがあるのか。俯瞰するための道具として、シンプルな2軸4象限のマトリクスを作ってみることにする。そのマトリクスを眺めながら、やっぱりビュッフェスタイルのイベントだけでよいのか、この連載のような面倒くさいコンテンツは本当に作る必要があるのか、などを見極めてみたい。まずは2軸を定義してみよう。