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企業の集客コンテンツづくりはなぜ難しいのか?

B.「直近の成功事例」型

 展示会等であなたの会社に興味を持ってくれた方から「うちの同業他社さんで、最近、おたくの商材を買って成功した事例ってあります?」と聞かれたことはないだろうか。特に高額な買い物の場合は、自分に近い立場の既存ユーザーが「XX社さんの商材、とてもいいですよ」と言ってくれれば、これから買う側にも、そして売る側にも、極上の安心材料になる。だから、どの企業のコーポレートサイトにも、業種、領域、商材など様々な切り口で検索できる成功事例ページがある。商談に既存ユーザーを直接巻き込む手法もよく取られる。また、外的環境はどんどん変わっていくので、直近のトレンドに合った事例なら尚よい。経営から「DXやれ」と命じられた人に対して「この商材でDXできた同業他社さんの事例がありますよ」と言えば、相手も俄然興味を持ってくれるだろう。特に黎明期の新規産業や創業間もないスタートアップ企業の場合、成功事例と既存ユーザーのポジティブな意見が、新規リードを一気に商談に持ち込むためのキラーコンテンツになる。また、こうしたコンテンツで既存ユーザーにスポットライトを当てることで、既存ユーザーとのエンゲージメントが深まっていく利点もある。難点があるとすれば、トレンドフォロー型コンテンツの宿命として、リリースが途切れてしまうと商いそのものが止まったような印象を与えてしまうことだろう。常にコンテンツを増産し続けなければならず、大変な思いをしているマーケターも多いはずだ。

 一方で、こうしたコンテンツは、あくまで「その会社の事例」であることを忘れてはいけない。この連載の第4回でも触れたが、確かに同業他社の成功事例は参考にはなる。しかし、世の中に同じ会社はひとつとない。他社を参考にするだけでは、本当にその商材が自社にとってベストチョイスなのか、きちんとしゃぶりつくせるのか、は分からない。コンテンツを提供する立場からすると「直近の成功事例」はあくまで顧客の興味関心を引くためのフックであり、これだけでは顧客に対して自分たちの商材を深く理解いただくことは難しい、と認識すべきだろう。極端かもしれないが、開口一番「事例ある?」と尋ねてくる人に対しては、「ありますが、だからといって、御社にうちの商材がピッタリ合うかは分からないです」くらいの切り返しをしてもよいと思う。

C.「顧客が真に求めるもの」型

 「直近の成功事例」型コンテンツの対極であり、顧客に自分たちの商材を深く理解いただくためのコンテンツである。その商材が、そもそもどういう困りごとに対するソリューションになるのか、どういうスペックなのか、使用時の留意点は何なのか、など説明的な内容が含まれる。ライフサイクルの長い商材であれば、5年前、10年前から現役のコンテンツもあるだろう。お世辞にも成功事例ほど「キラキラ」したものとは言えない。

 こうしたコンテンツが威力を発揮するのは、買い手がものすごく困っていて、そこに売り手がきちんと寄り添い、信頼関係を築こうとする時である。例えばあなたが、これまで経験したことのない体調不良に襲われ、病院に駆け込んだとする。いったい自分はどんな病気なのだろう、と不安を抱える中、ざっくり問診で「最近流行ってますから」と薬だけ処方する医師と、きちんと検査してその結果を丁寧に説明してくれた上で対応してくれる医師、信頼するならどちらだろうか。

 顧客も同じである。経験済みの困りごとなら、自らソリューションを選べるだろう。しかしこれまで経験したことのない困りごとになると、自分たちは具体的に何に困っていて、どういうソリューションを求めているか、クリアに言語化できない。こういうモヤモヤした状態の顧客に「こんな事例あります」「たくさんのお客さんが買ってくれてます」といった「直近の成功事例」型のコンテンツをゴリ押しするとどうなるか。いったんは「なんかよさそう」となっても、どこかで「ちょっと待てよ、我々が本当に求めているものはこれじゃないのでは」という懸念が生まれる。商談が成立するまでそれなりに時間のかかる商材であれば、顧客がいったん冷静に考える機会はいくらでもある。うまく商談成立に持ち込んだとしても、顧客の懸念がその後に爆発したら最悪である。誰が見てもその価値を理解しやすいシンプルなレディメイド商材ならあまり気にする必要はないかもしれない。しかしオーダーメイド要素が含まれるような商材の場合、相手の困りごとと商材の持つ課題解決力が運よく噛み合いでもしない限り、こうした懸念は生まれやすい。あなたがオーダーメイド商材の売り手であるならば、「直近の成功事例」で顧客にフックをかけた後は、相手に寄り添って困りごとを傾聴して言語化し、自社のソリューションがフィットするかどうかを検証して結果を提示するべきである。「顧客が真に求めるもの」型コンテンツは、こうした活動を支えるものになる。

 このタイプのコンテンツを作るためには、大量の成功事例や、既存顧客とのコミュニケーションの中から得られた様々な知見を、エバーグリーンな状態へと昇華させなければならない。自分たちの商材は本質的にどんな困りごとに対応できるのか、どのように商材を使えば顧客も自分たちもハッピーになれるのか、商材を使う上で顧客に期待する振る舞いは何か、などを内省しながら言語化していき、その商材を知らない顧客にも理解できるような書きっぷりで仕立てていく。はっきり言って「面倒くさい」。このタイプのコンテンツがなくとも「最近の成功事例」があれば集客はできる。「いやならやめれば」の世界なのだが、これをやり遂げなければ「顧客が真に求めるもの」に永遠に辿り着けない。中長期的には「おたく、うちのこと何もわかってくれないよね」となり、顧客離れの端緒にもなりうる。よくツールベンダーが「XXの基礎知識」やツールのスペックシートなどを作っているが、これらのコンテンツが果たして、顧客が理解できる書きっぷり、顧客が知りたい順になっているか、よく点検してほしい。売り手側の論理だけで作られたコンテンツは「顧客が真に求めるもの」ではない。

 一方で、「顧客が真に求めるもの」型コンテンツをしっかり作れば、「直近の成功事例」型コンテンツの深みが一段増す、というメリットもある。既存顧客の話す成功事例は、あくまでその方の文脈に依っており、売り手のそれではない。成功事例を並べれば並べるほど「単なる読み物の集まり」になってしまう。しかし「顧客が真に求めるもの」コンテンツを持っていれば、既存顧客へのインタビューの仕方も「なにか話してください」ではなく「我々がお客様に提供するソリューションや商材の価値はこういうものだと思っていますが、これらを踏まえてグッとくるエピソードをお願いします」にできる。こうした統一された文脈の成功事例が増えることで、コンテンツ全体に一本の筋が通っていく。

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結局、借り物のビュッフェイベントだけでいいのか

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谷風 公一(ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズ)(タニカゼコウイチ)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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