「根回し」と聞いて、ジャパニーズトラディショナルスタイル、古き慣行、不透明な関係を想起する方はファシリテーションというものをまだ完全に自分のものにできていないと考えて下さい。今回は、ファシリテーションに欠かせないテクニックとして根回しを取り上げます。
根回し=プレミーティングでムダな議論を省け
前々回の「人の知恵を借りる作業」、それから前回の「自分で考える作業」にて、作業時間を短縮して効率的に進めるやり方を扱ってきましたが、せっかく頑張って作った資料が相手に受け入れられなければまったく意味がありません。その努力が水の泡となるかどうか、命運を左右するのが事前の”根回し”です。
根回しと聞いて、ジャパニーズトラディショナルスタイル、古き慣行、不透明な関係を想起する方はファシリテーションというものをまだ完全に自分のものにできていないと考えて下さい。第1回で掲載したファシリテーションの定義を改めて確認しましょう。
企業内や学校内、地域のコミュニティーなど、組織での会議の場などで、
発言を促したり、話の流れを整理したり、参加者の認識の一致を確認する等の行為で介入し、
相互理解を促進し、合意形成へ導き、組織を活性化(協働を促進)させる手法・技術・行為の総称。
根回しとは、事前にキーパーソンへの説明を行うことで疑問を払拭する行為だと考えて下さい。ファシリテーションは相互理解を促進して合意を導き出すテクニックなのですから、その範疇に十分含まれます。
根回しでは自分の考えが相手にとって受け入れ可能であるかを見極め、必要ならばその場で妥協点を探ります。それを持ち帰って資料に反映させて会議に臨めば、お互いに理解を深めた状態でディスカッションを行うことができ、より一層の実りある会議となるでしょう。
根回しとは日本的なるものではない
誰だって初めて見る資料や初めて知る情報には構えて接するものです。このようなスタンスにある相手と短い時間で懐を詰めて議論を行うことは難しいでしょう。特に決定権や影響力を有する会議のキーパーソンがこのスタンスだと、相手を納得させる前に会議が終わってしまうことだって考えられます。皆さんも身に覚えがきっとあるはずです。
欧米でもファシリテーションに長けたコンサルタントなどは、プレミーティングと称してキーパーソンに対する事前説明を日常的に行っています。何もジャパニーズサラリーマンの専売特許ではないのですよ。

私は年間に200回以上の会議を主催しますが、必ずキーパーソンへの根回しを行ってから会議に臨んでいます。時間的な制約で全てのキーパーソンへの説明が難しい場合にも、自分にとって最も味方にしたい人だけは根回しをするようにしています。官公庁で仕事をされている方なら、ロジスティクスの重要性は言うまでもありませんね。
なお、会議の参加者全員に根回しをする必要はありません。それこそ時間のムダです。キーパーソンに絞って認識の刷り合わせをしておけば十分です。会議の前日、キーパーソンの予定が空いている時間帯に相手の机に直接赴き、「少しだけお時間を頂けませんか?」と切り出せば、大抵は話を聞いてくれます。
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- この記事の著者
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吉澤 準特(ヨシザワ ジュントク)
外資系コンサルティングファーム勤務。ビジネスからシステムまで幅広くコンサルティングを行う。専門分野はシステム運用改善をはじめとするインフラ領域だが、クライアントとの折衝経験も多く、ファシリテーションやコーチングにも造詣が深い。まぐまぐにてメールマガジン「IT業界の裏話」を発行中。著書に「最新会議運営...
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