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請負か準委任か 曖昧な開発契約が招いた末路

前編

 システム開発の契約において、よくある形態として「請負契約」と「準委任契約」があります。こうした契約の使い分けが、曖昧になることで陥りやすいトラブルについて、2回にわたって解説します。今回は前編です。

曖昧な契約が招くトラブル

 システム開発をベンダーに発注する際、皆さんの会社ではその契約形態をどのようにしているでしょうか?

 よくある形態としては、原則として、とにかく成果物さえ作って納品してくれれば体制も工数も作業方法もお任せする“請負契約”と、それらを委託者側であるユーザー企業側が指揮監督する“準委任契約”があります。

 一般的に、システム開発の上流で行われる要件定義は、本来ユーザー企業が責任を負うべき作業であり、ベンダーはその手伝いをすることが自然との理由で準委任契約とします。その後の設計・開発は、ITの専門家であるベンダーに責任を負わせるのが妥当なので、請負契約にするという形式がよく採用されてきました。

 また最近はアジャイル開発など、発注時点では成果物(あるいはシステムに具備すべき機能)を明確に定義できない開発などは、成果物の完成責任をベンダーが負わない準委任契約が合理的との意見もよく聞かれ、実際そのようにするケースも増えているように思います。

 ただ、こうした契約の使い分けが、かなり曖昧になっている契約も多いのではないでしょうか。今回取り上げる裁判も、曖昧な契約であったために、いざシステム開発が失敗したときに、その責任をどちらが負うのかについて争ったものです。

 契約が請負か準委任かはどのように判断され、その結果、責任の所在はどのようになるでしょうか。そして、そもそもこうしたトラブルを避けるために、契約の際に気をつけるべきこととは、どのようなことなのでしょうか。まずは事件の概要から見ていくことにしましょう。

 (東京地方裁判所 平成27年6月25日判決)

 ある開発ベンダーがユーザー企業から美容サロン向けのPOSシステムの改修作業を依頼されたが、作業終了後、ユーザー企業は、システムに不具合があることを理由に費用の支払いを拒んだ。これに対してベンダーは本契約が作業員の工数に従って費用を定めており、また契約では、ユーザー企業がベンダーに対して作業指示を行うことになっていることから(準委任契約)、システムの不具合を理由に支払いを拒むことはできないとして訴訟を提起した。

 ユーザー企業は、本件個別契約には、ベンダーが成果物を納品し、且つその動作保証をすることを記している(※1)ことから、不具合のあるシステムに支払いを行う義務はないと反論した。

※1本件契約書では以下のような記述があった。

  1. 本件委託内容は、本件製品の改修作業に関し、ユーザー企業、ベンダー協議の上1人月相当と合意した作業を、ユーザー企業の指示に従って行うものとし、改修後の本件製品のソースコードを含む開発環境一式、改修箇所および改修方法を示すドキュメントおよび動作保証された実行形式プログラム一式を納品物とする。
  2. 納品物に関する経過作成物はユーザー企業の指示に従い随時、Y指定のFTPサーバに格納するとともに、平成23年7月末日までに納品するものとする。

次のページ
請負と準委任で不具合に対する責任の所在がまったく変わる場合も

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この記事の著者

細川義洋(ホソカワヨシヒロ)

ITプロセスコンサルタント東京地方裁判所 民事調停委員 IT専門委員1964年神奈川県横浜市生まれ。立教大学経済学部経済学科卒。大学を卒業後、日本電気ソフトウェア㈱ (現 NECソリューションイノベータ㈱)にて金融業向け情報システム及びネットワークシステムの開発・運用に従事した後、2005年より20...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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