スターウォーズと神話学
スターウォーズは、ある研究が元にストーリーが組まれています。ジョーゼフ・キャンベル氏の神話学の研究です。世界各地の神話の比較研究に多くの業績を残し、斯界の第一人者として活躍した人です。私は『神話の力』という本を読みました。キャンベル氏は、世界の英雄伝説に共通している構造は、三段階、(1)「セパレーション」(分離・旅立ち)→(2)「イニシエーション」(通過儀礼)→(3)「リターン」(帰還)であるとしています。それは、「英雄はまず、(1)日常世界から危険を冒してまでも、人為の遠く及ばぬ超自然的な領域に出掛けるのである。ついで(2)その出掛けた領域で超人的な力に遭遇し、あれこれの変転はあるものの、最後は決定的な勝利を収める。そして(3)英雄はかれに従う者たちに恩恵を授ける力をえて、この不思議な冒険から帰還する。」という道のりです。[※1]
スターウォーズのエピソード4-5はこれを参考に作られていると言われています。英雄ではない私には想像できない、壮大なジャーニーです。
ジャーニー(旅路)とキャリアの起源
よく外資系企業ではこのジャーニーという言葉が使われます。到達するまでに時間がかかることがらを旅路に例えるのです。私たちのキャリアも、セールス&マーケティング活動も単発の活動ではなく、長い旅路になります。もともと「キャリア」の語源になったのは、ラテン語の「carrus(車輪の付いた乗り物)」であると言われており、レールコースを意味するようになったそうです。どちらかというと過去の車輪の跡なのでしょうが、今は将来の車輪の跡も表しています。そういえば、マイクロソフト時に、ウォルマートでレジ打ちから初めて29歳で史上最年少の役員になり、マイクロソフトのCOOになった人がいました。凄いキャリアですね。
私のキャリアの旅路をみると、結構、ぐちゃぐちゃです。富士通のソフトウェア エンジニアからキャリアをスタートして、マイロソフトでマーケティングに移り、オペレーション系の仕事をして、また、マーケティングに移っています。会社もすでに日本の履歴書には収まりきらないです。ただ、50うん歳にして、まだ来てほしいという会社があるので、様々な経験が役にたち、なんか面白い人間だと思われているようです。どの会社も、機会とチャレンジがあり、それを何とかしてくれそうだと期待されるのです。長年の“多く”のグローバル会社で学んだキャリア開発について、今回は共有したいと思います。
そもそもキャリア開発は、スキルと経験・知識の蓄積につきるかと思います。もちろん、それでパフォーマンスを出す必要があります。また、先を見て、どうそれらを獲得するかの戦略を立る必要があります。そして、その軸は2つあると思います。1つはプロフェッショナリズムで、他方はリーダシップです。プロフェッショナリズムは、たとえば、私ならマーケティングですし、コンサルティングだったり、営業だったりといったジョブに求められるスキルや経験・知識になります。その中には、英語力、プレゼン力などのソフトスキルも含まれます。リーダシップは、会社によってその求められるスキルが異なるですが、会社を変革する力やコラボレーションを促進する力になります。リーダシップはソフトスキルとして定義されることお多いと思いますが、私は外だしにしています。そして、生まれ持ってのリーダシップスキルはないとの前提です。なぜならスキルだからです。
その2軸で、勉強して、経験して、様々なスキルを上げ行く必要があります。特に難しいのは、リーダシップだと思います。それぞれの軸でみていきましょう。
プロフェッショナリズムの方程式
まずは、プロフェッショナリズムです。最近『プロフェッショナル・アドバイザー~信頼を勝ち取る方程式』という書籍を読みました。それはプロフェッショナリズムとして信頼をどう勝ち取るかを勉強するためです。この本は、コンサルティングの方がどうクライアントの信頼を勝ち取るかというテーマなのものですが、学ぶことが多くありました。そもそも信頼というは、方程式があり、分母を小さくし、分子を大きくする必要があるとのことです。
その方程式は、T=(C+R+I)÷S です。
それぞれT=信頼、C=信憑性、R=信頼性、I=親密さが分子で、S=自己指向性が分母です。
「信憑性は言葉の領域で、あの人が言っていることは信頼できる。たとえば、経歴とか、職位だったりもします。信頼性は、行動の領域で、あの人のやっていることは信頼できる。親密さは、感情の領域で、あの人と話していて楽しい。自己指向性は、動機の領域で、彼が興味がる分野は信頼できる。」といったことです。
たとえば、自己指向性が高いと、「なんか自分のことばかり考えているんじゃない」と疑われ信頼性は下がるということです。
この方程式も大変面白いのですが、私がこのプロフェッショナルな軸で参考になったのは、信頼されるアドバイザーの展開です。対クライアントで記載された本ですが、社内のステークホルダーや対顧客に置き換えると、ヒントが見えてくると思います。これも2軸があり、それは「ビジネス上の問題」と「個人的な関係の深さ」です。最初は特定の専門家で、次は特定の専門家プラス周辺分野、価値あるリソース、信頼されるアドバイザーになります。プロフェッショナルでの特定の専門家はキャリアの始まりだと思いますが、やはり目指すべきは信頼されるアドバイザーだと思います。そのためには、担当分野の専門性から入り、周辺の知識・スキルを得て、色々なアイデアをもちこみ、そして、もっと大局的に問題や機会を特定して専門知識を生かし解決する、そういう流れが大事かと思います。
プロフェッショナリズムについては、別の見方もできます。最近は、ジョブ型雇用が話題になっていますが、それは、各職務の内容(ジョブ)を職務記述書(ジョブディスクリプション)にて明記し、その内容に基づいて必要な人材を採用・契約する制度です。過去3回ほど、このジョブ型雇用のプロジェクトをかかわったことがあります。その波が日本企業にも来ているのでしょうね。
採用、契約は別にして、各ジョブは階段形式になっていまして、それぞれの階段でどのようなスキルが必要で、給与はこれくらいですよと定義されていきます。階段をまっすぐ上る場合もありますし、私のよう他社の違う階段を上る場合もあります。ただ、1つ上にいくのはどのようなスキルが必要かと定義されるので、プロフェッショナルなキャリアを考えやすい特徴があります。管理職になると、リーダシップのどのようなスキルが必要になり、そこに定義されていると思います。
シスコのリーダーシップの定義
もう一方の軸が、そのリーダシップになります。職位が高くなれば、このスキルはより重要になりますが、一般職の方にも重要なスキルです。人をリードする力ですが、それは持って生まれた特殊なものではありません。
ただ、求められるリーダシップスキルは会社によって異なります。なんとなく同じ方向性なのですが、企業文化をどのように作っていくかにもかかわるので、企業ごとに定義されていると思います。たとえば、アマゾンをみると、プリンシパルとして公開されています。[※2]圧倒されそうに凄い数のプリンシパルですが、アマゾンではどれもが重要なことなのでしょう。
私がいまだに好きなのは、Cisco Systemsのリーダシップの定義、C-LEADです。これは、Collaboration、Learning、Execution、Acceleration、Disruptの略で、Collaborationがベースにあり、破壊であるDisruptまであるのがよいところです。
リーダシップを大切にしている企業は、求めるリーダシップに社員がそれにそって行動しているかどうかを、様々な評価方法で、全員を評価して、管理職が改善方法について議論をしたりします。Cisco SystemsではC-LEADの評価軸で評価していました。リーダシップって、少し概念的なことですが、どうコラボレーション力を高めるかなどは、アドバイスの方法、説得する方法など、色々な本がでているので、参考にできると思います。
2つの軸をどうするか自身の会社で決め、自分が今いるところを自己評価して、そして、上司などと相談して、今後のキャリアを考え、次のどのスキルを上げるかを考えてみてください。スキルの向上に終わりはありません。長いジャーニーです。私は、年度の始めに部下に対して、今後いきたいキャリアの方向性、現状のスキルの卸、そして、今後の改善エリアや方法について話すのが好きです。年度の途中途中で、相互にチェックし合えると更に良いです。