税制適用で求められるD要件とX要件
――2020年12月21日に閣議決定された「令和3年度税制改正の大綱」では、DX投資促進税制の創設が目玉の一つとなっています。DXに挑戦する企業にとっては追い風が吹いていますが、一見した限りではかなり複雑な制度に思えます。どんな税制なのか、概要を解説していただけますか。
上田:適用を受けたいと考える企業は、デジタル要件(以降、D要件)と企業変革要件(以降、X要件)のどちらの要件も満たした事業適応計画を策定しなくてはなりません。そして、事業を所菅する担当大臣にこの事業適応計画を提出し、認定を得られれば、税制メリットを得ることができます。具体的なメリットとしては、計画に基づいて実施する投資額(上限と下限がある)に対し、税額控除(3%もしくは5%)または特別償却30%のどちらかを選ぶ形になります 。部門や拠点ごとではない全社的な変革にかかる投資を優遇していきたいという経済産業省の思いから、経営者のコミットを必須としているのが特徴です(図1)。
――事業適応計画の策定は難しそうですね。
上田:D要件として「データ連携・共有」「クラウド技術の活用」「DX認定の取得」の3つ、X要件では「全社の意思決定に基づくものであること」「一定以上の生産性向上が見込まれること」の2つを全て満たす必要がありますから、DXに全社的に取り組んでいる企業のみが対象となる税制だと思います。4月時点では計画申請書の内容が公開されておらず、詳細が明らかになるのは5月以降ですが、過去の税制から考えると、比較的いろいろな項目を記載することになるでしょう。申請書作成にあたっての最初のハードルは、D要件の1つであるDX認定取得だと考えています。すでに取得している企業は別として、これからの企業にとってはこの認定取得が必須です。