
コロナ禍で営業組織の働き方も大きな変化のときを迎えている。機敏に動くのはベンチャー企業や中小企業だ。トップと現場の距離感が近く、即時即応しやすいのが要因だが、大手企業はどうだろうか? 今回は日本の大手企業における「セールスDX」について、NTTコミュニケーションズの徳田泰幸氏と、ジャパン・クラウド・コンサルティングの代表であり小社刊『THE MODEL』の著者でもある福田康隆氏の対談を通じて考えていく(後編)。
大企業のセールスDX浸透には、「人を活かす」育成の仕組みも必要
前編も公開中です!
押久保(EnterpriseZine) 実際にセールスDXの階層をあがっていくために、大手企業はどのような取り組みをしていくべきでしょうか。中小企業のようにトップダウンで一気に進めるということは難しい中、解決策はあるのでしょうか? 福田さんは、大手企業が導入するSaaSを数多く支援されていますが、提案する側から見て、どのように感じられますか?
福田氏(ジャパン・クラウド・コンサルティング) 「大企業の壁」というのはありますね。たとえば、SaaSの導入によって現状よりもかなりコスト削減できる提案をしたとしても、「福田さん、コスト削減できるのはわかったけど、その分余った人を削減できないんだよ」と言われてしまう。人を減らせないから、コスト削減ができない。アメリカだとこれがシンプルで、インドでやったほうがコスト削減できるなら、インドでやりましょうとなる。

徳田氏(NTTコミュニケーションズ) これはうちも「あるある」ですね。だからこそ、問題は「人」をどのように教育し、マインドや手法の変化を促していくかということ。たとえば、営業職の教育では、多くの場合、先輩に付き添ったOJTの中で最初の経験を積むわけです。しかし、それだと付いた先輩のやり方に染まってしまう懸念もある。

宮田(SalesZine) 新入社員は上司や先輩を選べないでしょうから、成績の良い先輩に付いた新人が成績をあげられ、そうでない場合は成績をあげられないということもありそうです。良い意味での標準化は望めませんね。
徳田氏 福田さんの著書である『THE MODEL』のようなメソドロジーのようなものが、これからの日本企業にも必要だと思います。属人的なままの営業では、その人が辞めてしまえば会社に残るナレッジは極めて少ない。成果起点の育成サイクルをつくり、ハイパフォーマーのナレッジを、いかに会社に残していくのか、これが重要です。
福田氏 メソドロジーはもちろんですが、成果を出した人がきちんとキャリアの次のステージに上がって新しいチャレンジに取り組めるというようなフェアな仕組みなども、会社には求められていくでしょうね。年功序列などではなく、成果を出した人に正当な評価が与えられる。一方で、多くの新卒を採用する日本の大手企業ならではの、手厚い研修・育成制度には、私自身もキャリアスタートの時点で非常に助けられましたし、重要な文化だとも思っています。
徳田氏 おっしゃるとおりですね。そのうえで、社員側は自分の頭で状況に応じてどのような顧客接点を生み出していくべきか? を考えられるスキルを備えてもらわなくてはいけない。そこで求められるのがオリジナルの営業育成プログラムです。弊社ではいくつかの取り組みをしています。
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中村 祐介(ナカムラ ユウスケ)
株式会社エヌプラス代表取締役デジタル領域のビジネス開発とコミュニケーションプランニング、コンサルテーション、メディア開発が専門。クライアントはグローバル企業から自治体まで多岐にわたる。IoTも含むデジタルトランスフォーメーション(DX)分野、スマートシティ関連に詳しい。企業の人事研修などの開発・実施...
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