危機感から始まった日揮グループのDX
――CDOに就くまでのご経歴と、現在のDX推進組織についてご紹介をお願いできますか。
花田:石油・ガス分野のエンジニアとして入社しましたが、6年後にビジネス開発に異動し、以降は日揮の事業環境の変化に即して様々な分野の仕事に携わってきました。例えば、自動車会社への出向は、彼らのビジネスの海外進出サポートするためですし、コアビジネスであるEPC(Engineering, Procurement, Construction)事業に頼らない新しいビジネスを立ち上げようと、NTTコムウェアと共同でトライアンフ21という会社の設立と経営にも関わりました。その後も海外拠点を成長させないといけないということで、アルジェリア現地法人の代表も経験しました。
2016年からは事業開発に力を入れていきたいということで事業開発本部長に就任したのですが、エンジニアが育っていない。エンジニアリング会社なのにこれで良いのだろうか……事務系の人事部長ではどうしてもエンジニアに遠慮してしまう。叱咤激励ではなく、激励しかできないわけです。そこでエンジニア出身の私が2017年から人財・組織開発部長として人事を見ることになりました。そうこうしている内に今度は、人だけでなくデジタルも課題としてクローズアップされるようになってきました。きっかけは海外のあるお客様から「日揮のデジタルは2周遅れだ」と言われたことです。そこで、社内に散らばっていた関連組織を集約し、DX専門組織を作ってCDOに就任したのが2018年のことでした。2019年10月から持株会社体制へ移行したことを機に、日揮ホールディングスで人財とデジタルを並行して見ることになり、日揮グループのCDOに就任しました。
――人事出身の方がCDOを務めるのは珍しいですね。
花田:DXを進めるのは人です。CDOとして変革を推進するには、人事を管掌するポジションの継承が望ましいということで、兼務しています。さらに、2021年4月からはエンジニアリングのやり方が変わることを視野に入れ、海外EPC事業会社である日揮グローバルに「エンジニアリングソリューションズセンター」を設置しました。日揮のエンジニアリング価値を抜本的に見直すことがこの組織のミッションで、現在、私はエンジニアリングセンタープレジデントも兼務しています。この他、日揮グローバルでは旧来のオイル&ガスのプロジェクト組織を「エネルギーソリューションズ」に、オイル&ガス分野に続く事業として成長が期待されるインフラビジネスのプロジェクト組織を「ファシリティーインフラソリューションズ」として改編する組織改革も行っています(図1)
――エンジニアリングソリューションズセンターは、なぜ日揮グローバルの組織になったのでしょうか。(日本の)日揮は見ないのでしょうか。
花田:当面は日揮グローバルの視野にある海外です。日本では設計は国内で設計、調達は国内で調達、建設は国内で建設という色が濃い。しかし、今後は誰もが何時でも何処にいてもエンジニアリングを行うように変わってくる。このトレンドは、経済のグローバリゼーションが進む中で、その価値を発揮するようになります。一方、国内EPC事業会社である日揮とも人財交流を行い、常に日揮グループ全体としての情報共有を続けるつもりです。