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部門の成果と評価を噛み合わせる――ビジョン、活動コンセプトから施策へ Marketo Master/Marketo Champion 谷風公一の集中講座【連載第7回】

 ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズの谷風公一氏による連載の第7回。前回で「組織改革編」を終え、本連載は、日々の活動の中で、組織の強度や業務品質を徐々に体質改善していくコツや考え方を「運用編」としてお伝えしていく。(編集部)

 今回より後半戦に入る。本連載で一貫してお伝えしているのは、なんでもこなせてしまうスーパープレイヤーに頼りきりになったり、「なぜ必要か」を言語化しないままツールだけ導入したりしても、時代の変化に弾力的に適応する強い組織にはならない、ということだ。これではDXを成功させるのも困難だろう。前半戦では、強い組織に生まれ変わるための「改革の技法」をお伝えしてきた。ざっくり言えば、自分たちが将来こうありたいと思えるコンセプトを打ち立て、コンセプトを実現できる組織や業務を具体的に描き、それに合ったITを選び取る、これが改革の技法の全体像である。このやり方は、マーケティングに限らず、あらゆる組織に適用できる。気になる方はぜひ連載を読み返してほしい。とはいえ、日々の多忙な業務の中で、こうした改革に切り込むきっかけを掴みあぐねている方々もいらっしゃるだろう。そこで後半戦では、すでにある仕組みの中で、徐々に組織の強度を増したり日々の業務の品質をさらに高めたりするためのコツや考え方をお伝えしていく。ただし、本連載は、BtoBマーケティング、特に、顧客と長期にわたり友好な関係を継続していくためのマーケティングにフォーカスしてお届けする。

なぜマーケ部門と経営や営業部門は噛み合わないのか

 最近、他社のマーケターの方々から様々な相談をいただく。メルマガの開封率が奮わないのでなんとかしたい、展示会でもっとたくさんの名刺を収集したい、セミナー参加者数の下げ止まりを食い止めたい。どれもマーケターにとって切実な悩みである。いただいたお悩みに私なりのコメントを返した上で、ご相談相手に以下の質問をするようにしている。「ところで、これが解決すると、その先にどんな良きことが待ってるんですか?」この問いに明快に答えられる方はあまりいらっしゃらない。

 ここにマーケ部門、特にBtoBのマーケ部門の抱える本質的な難しさがある。やっとの思いでメルマガの開封率を10%上げても、名刺を1,000枚集めても、セミナー参加者を100人増やしても、経営や営業から「だから何?」と言われてしまう。「なんのためにマーケをやってるのかわからなくなってしまった」と肩を落としたことのあるマーケターもいらっしゃるだろう。なぜこんなに成果と評価が噛み合わないのだろうか。

 ほかの部門を見てみると、生産部門や経理部門など、いわゆる実務部門の場合、日々の活動が停滞すれば会社の存亡に関わることは誰もが承知している。だから定量的な指標で組織を管理し、もし数値が奮わなければ、それを引き起こした課題を見つけ出し解決することが求められる。時に多額の費用を投じて業務やITを大手術せねばならないこともあるが、経営も、それが自社の利益やガバナンスに効く、と分かっているから、背中を押してくれる(大手術はぜひ改革の技法で進めてほしい。成功率がグッと上がるだろう)。

 一方、メルマガの開封率や名刺の収集枚数も定量的な指標だが、これらが奮わないからといって、会社の存亡にたちまち影響するだろうか? 少なくとも経営や他部門はそうは思ってくれないだろう。また、マーケターの地道な努力でこれらを高められたとしても、それが会社の売上にたちまち寄与することは稀だし、マーケター自身も、自分の仕事の成果が会社や商材の市場価値を確かに高めた、という実感を持ちづらい。また、実務部門は、あらかじめ定義された業務プロセスをチームプレーでこなしていくものだが、マーケ部門の場合は、ともすれば施策単位の個人プレーを積み上げるだけになってしまうこともある。こういった事情が、部門としての成果と評価の噛み合わなさに拍車をかけている。

 この難しさは、マーケ部門だけでなく、企画系の部門(経営企画、人事企画など)全般が抱える特徴だろう。会社の将来をアップデートするような骨太の施策を成し遂げたとしても、それが効いてくるのは5年後10年後だったりするので、「あの部門は何をやってるかわからない」「何かに取り組んでいるようだが、目に見えて会社がよくなる感じがしない」「会社の数字をこねくり回しているだけではないか」などと暗に言われることもある。会社がうまくいっていればこうした言い様をスルーもできようが、少しでも社内に暗雲が漂い始めると、経営にまで「いったいなにをやっているのか」と叱責されたりもする。
ではメルマガの開封率を10%あげることに何の意味もないのか、というと、決してそんなことはない。「なぜ」メルマガの開封率をあげる必要があるのか、周囲を納得させられる理由をマーケター自身の言葉で表明できるのであれば。

谷風 公一(ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズ)
ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズ株式会社 アソシエイト ディレクター。「プロジェクトを成功させるのが得意」なコンサルティングファームで、コンサルタント/ファシリテーターとして、数々の企業変革、DX推進のプロジェクトに参画。2019年、社内でマーケティング部門にスイッチ。自社のマーケ・営業組織を改革、デジタルマーケティングを推進。現在はマーケティング部門の責任者。2019年
Marketo Engage Champion、2020年 Marketo Engage Master、2021年 Marketo Engage Master を受賞。


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著者プロフィール

  • 谷風 公一(ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズ)(タニカゼコウイチ)

    ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズ株式会社 アソシエイト ディレクター。「プロジェクトを成功させるのが得意」なコンサルティングファームで、コンサルタント/ファシリテーターとして、数々の企業変革、DX推進のプロジェクトに参画。2019年、社内でマーケティング部門にスイッチ。自社のマーケ・営業組織を改革、デジタルマーケティングを推進。現在はマーケティング部門の責任者。2019年Marketo Champion、2020年Marketo Masterを受賞。

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