Notesレガシーからの脱却が課題だった
20年以上使い続けたNotesを切り替えることは、大きな決断だった。そもそもグンゼがNotesを採用した90年代には、Notes/Dominoと言えば先進的なツールだったが、時代の変化と共に多くの問題が浮上していた。導入の背景について、同社の技術開発部 IT戦略室 室長 鶴海真治氏はこう語る。
「最大の問題は、Notesが重いことです。社外からの利用ではリモートツールで社内のネットワークにアクセスする必要があるのですが、通信のトラフィックが重いので使いづらかった。国内の回線ではなんとかなりますが、通信環境の弱い海外拠点もあるので問題でした」
もうひとつは、社員の働き方の変化への対応だ。2016年頃からの事業部長へのヒアリングでは、ワークスタイル変革の気運が高まっていた。社外からスマートフォン・タブレットの利用への要望も多かったが、NotesではiPhone/Androidなどスマートフォンへの対応が弱く利便性が悪い。
また、クラウドの時代になりNotesのシェアが低下し、今後活用し続けることへの不安もあった(2017年時点で、シェア14%を切る状況)。Notesのスキルを持ったエンジニアは、先細りしていくため、人材確保とコストの面でも難しくなると鶴海氏は考えたという。
「Notesを移行するとしたら、数年に一度のバージョンアップの時期しかない。実は2010年代の前半にもNote移行は俎上にあがっていました。ただそれまで決断ができなかったのです」(鶴海氏)
2012年のバージョンアップの時期は、東日本大震災の後の状況で、オンプレミスからクラウドやSaaS移行の気運は高まっていた。しかし見合わせた理由は、セキュリティの要件だった。当時、クラウド型のメールといえば、Googleの企業利用が台頭してきた時期で、MicrosoftのSaaS型のサービスはまだ普及していなかった。Google(当時はGoogle Workplaceの前身のG Suite)はまだパーソナルツールの延長とみなされ、今回採用されたHENNGE Oneのようなアクセス管理やセキュリティツールも、成熟していなかった。