ハイブリッドワークに移行後も残る6つの課題
リモートワークが進み、オフィスの風景はすっかり様変わりした。会議室で喧々諤々の議論、あるいは同僚とコーヒーカップ片手に雑談する風景がなくなる一方、自宅で1人静かに仕事をする働き方が定着した。それに伴い新しい課題が浮上している。具体的には以下の6つである。
【課題】
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単独作業の生産性は上がったが、コラボレーションの生産性はどうか。
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Web会議だけで意思疎通ができているのか不安だ。
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ITリテラシーが低く、リモートワークが成り立たない。
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部下を直接指導できなくなったと嘆く管理職が増えた。
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人と人との結びつきが弱くなった。
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ちょっとしたコミュニケーションができなくなった。
2021年10月から徐々にオフィスに人が戻りつつあるが、おそらく私たちの働き方がコロナ前に戻ることはないだろう。一部はリモートワーク、一部はオフィスと、社員それぞれの生産性を最大化する『ハイブリッドワーク』に移行することになりそうだ。そうなると、今後も6つの課題は残る可能性が高い。
志賀氏によれば、この6つのうち、課題1から課題3までがエクスペリエンスの課題、残りの3つはエンゲージメントに関する課題に分類できる。ここでのエンゲージメントとは、「結び付き」のことで、人と人の結び付き、組織の場合は良いチームワークの状態と言えるだろうか。志賀氏は「エンゲージメントを高めるには、『コミュニケーションの頻度と量』、これを増やすことでしか達成できない」と強調した。
また、エンゲージメントの高い組織は、構成員それぞれが組織の目的を理解し、帰属意識を持ち、同僚との関係も良く、自発性が高いこともわかっている。米国の社会心理学者ソニア・リュボミアスキー氏の研究によれば、「従業員エンゲージメントが高い組織は、従業員の生産性、販売成績、クリエイティブな能力が高い」という。さらに同氏は「エンゲージメントが高い人ほど生産性が高いだけではなく、総じて幸せを感じている」とも報告している。つまり、会社の業績を上げるには、従業員が気持ちよく働き、幸せを感じるようなエクスペリエンスを提供しなければならない。
では、従業員エクスペリエンスとは何か。体験の訳を目にすることが多いが、ガートナーでは「従業員と組織との相互作用と組織内での相互作用をどのように内部化し、解釈するか、およびそれらの相互作用に影響を与えるコンテキスト」と定義している。もう少しわかりやすく言えば、「人と組織、人と仕事、その関係性」とも言える。最近はエクスペリエンスこそ、従業員のパフォーマンスに直結していると考えられるようになってきた。