“使いこなせないツール”に年間1,620万円 データ統合に膨大な時間
施策と分析の実現に向け、このアパレル企業では2019年4月にMA、BI、およびCDPツールをそれぞれ導入した。しかしながらそこには「ツール利用、運用の壁がありました」と宮川氏は語る。ツールの導入はしたものの、1年経ってもこれらを使いこなせていなかったのだ。その理由は、“必要なデータ”の準備に時間がかかったからだという。
EC送客の施策を実施するには、顧客IDや氏名、メールアドレスや商品IDなど“9つのデータ”が必要であった。これらのデータは基幹システムから集めてくることになり、さらにシステムになければ別途データを加工する必要がある。データ収集を始めてみると、7つはシステム上で集めることができたが、「最終購入日からの経過日数」と「EC未購入者のフラグ」のデータは新たに作成しなければならなかった。
また、たとえ基幹システム上にあったとしても、顧客データ、商品データ、受注データと、システムの中にばらばらの状態でデータが存在しており、それぞれからデータを取り出し統合する必要があった。データの加工・統合にはかなりの手間がかかり、今回のケースではそのために9つのタスクをこなさなければならなかった。
たとえば、最終購入日からの経過日数のデータを作るタスクでは、「現時刻 - 受注日時」の時刻演算で算出する。また、データを統合するには、顧客IDを軸に顧客データと受注データを統合するといった処理が必要だ。これらをはじめとする9つのタスクを繰り返すことで、ようやく必要なデータがそろうのである。
そしてこれらの作業には、CDPツールでSQLを記述する必要があった。具体的には加工用と統合用のSQLが必要で、残念ながらマーケティングの部署にはそれらのSQLを書ける人材はいなかった。結果、情報システム部門に依頼することとなるが、彼らも他の作業で忙しく、データ準備には3ヵ月もの時間がかかってしまう。つまりデータ準備に時間がかかることが、ツール導入、運用の障壁となってしまったのだ。

もう1つの障壁がコストだった。導入したMA、BI、CDPのツールには、それぞれ順に月額約45万円、30万円、60万円の費用が発生していたという。金額に納得した上で導入こそしたものの、使いこなせていないのに年間で1,620万円ものコストが発生し続けるのは問題だった。この状況を受け、同社では既存ツールをリプレイスし、b→dashの導入を決定したのである。
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谷川 耕一(タニカワ コウイチ)
EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...
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