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「DX推進に必要な要素は4つある」――中外製薬がデジタルで目指すトップイノベーターへの道筋 進む創薬プロセスでのAI活用とヘルスケアイノベーション

  2021/12/28 08:00

 中外製薬は、2019年に策定した3ヵ年中期経営計画「IBI 21」で設定した定性/定量両方の目標を1年前倒しで達成したとし、2021年2月に新成長戦略「TOP I 2030」を発表した。「TOP I 2030」では「世界最高水準の創薬の実現」と「先進的事業モデルの構築」の2つを柱に据えている。2030年に向けてヘルスケア産業のトップイノベーター像の確立を目指す中、DXはどのような位置付けにあるのか。11月25日に行われたオンラインイベント「data tech 2021」に登壇した、同執行役員 デジタル・IT統轄部門長を務める志済聡子氏は、「中外製薬におけるDX戦略」と題した講演で、現在進行形の取り組みの詳細を語った。

DXは新成長戦略のキードライバー

 医薬品開発のビジネスは、莫大な研究開発投資と10年以上の開発期間を要することで知られている。加えて、その成功確率は0.004%とも言われている。海外のメガファーマでさえ、近年はR&Dの生産性が年々低下する傾向にあった。

 この厳しい環境で、革新的な医薬品をできるだけ早く市場に投入するには、デジタル技術、中でもAIならびに医療ビッグデータ(リアルワールドデータ)の活用が不可欠である。製薬会社が新薬の市場提供のスピードアップに成功すれば、医療関係者は患者に最先端の治療を提供できる。患者も新しい医療を享受することが可能になり、引いては健康寿命の延伸とQOL向上が実現する。政府や自治体にとっては、めぐりめぐって保健医療費の抑制にもつながり、「四方良し」を達成することが期待される。

中外製薬株式会社 執行役員 デジタル・IT統轄部門長 志済聡子氏
中外製薬株式会社 執行役員
デジタル・IT統轄部門長 志済聡子氏

 そのためにもデジタルの力が必要だ。新成長戦略「TOP I 2030」では、大きな目標として「R&Dアウトプットの倍増」「自社のグローバル品 毎年上市」の2つを掲げている。加えて、それぞれの実現に向けては、「世界最高水準の創薬技術の実現」「先進的事業モデルの構築」の達成が必要と定義し、「デジタルトランスフォーメーション(DX)」をキードライバーの1つと位置付けている

 2020年に発表した「CHUGAI DIGITAL VISION 2030」でも、「デジタル技術によって中外製薬のビジネスを革新し、社会を変えるヘルスケアソリューションを提供するトップイノベーターを目指す」という目標を掲げている。そして「デジタルを活用した革新的な新薬創出」「すべてのバリューチェーン効率化」「デジタル基盤の強化」の3つの基本戦略を柱に据え、「革新的新薬を核に、真の個別化医療、QOLの向上、そしてサスティナブルな社会保障制度を実現する」というビジョンを描く。

 このビジョンと戦略も含めて「DX推進に必要な要素は4つあると考えています」と志済氏は説明する。その4つとは、既に説明した「明確なビジョンと戦略」に加えて、「トップのリーダーシップ」「人財強化・組織風土改革」「推進体制の確立」だという。


著者プロフィール

  • 冨永 裕子(トミナガ ユウコ)

     IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタントとして活動中。ビジネスとテクノロジーのギャップを埋めることに関心があり、現在はマーケティングテクノロジーを含む新興領域にフォーカスしている。

  • 関口 達朗(セキグチ タツロウ)

    フリーカメラマン 1985年生まれ。 東京工芸大学芸術学部写真学科卒業。大学卒業後、小学館スクウェア写真事業部入社。契約満期後、朝日新聞出版写真部にて 政治家、アーティストなどのポートレートを中心に、物イメージカットなどジャンルを問わず撮影。現在自然を愛するフリーカメラマンとして活動中。

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連載:data tech 2021 レポート
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