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週刊DBオンライン 谷川耕一

進まない「CRM定着化」問題 解決方法をVymo 原沢氏に聞く

 2022年3月3日、IBMが「IBM定着化支援サービス for Salesforce」の提供を発表した。Salesforceは導入後も、時代に合わせ設定や収集するデータ、ツールの使い方などを変化させる必要がある。さらにSalesforceは年に3回のバージョンアップがあり、新機能を使いこなすためにも、Salesforceの利用を進化させ続ける必要がある。導入後も継続して利用の最適化を図り、Salesforceの価値を高め営業やマーケティングのDXを実現する。これが定着化ということだ。

組織にCRMの定着化が進まない問題

 SaaSであるSalesforceならば、導入すればすぐに活用できその価値を享受できると考える。ところがSalesforceに限らず、CRMのソリューションは、導入したもののなかなか使いこなせないことが多い。そのため「Salesforceの定着化をサポートする」サービスは、IBM以外にもNECやキヤノン、テラスカイ、WalkMeなどさまざまなベンダーから提供されている。

 IBMを始めとする大手ベンダーにCRM定着化のサポートを依頼すれば、それなりに大きな費用が必要だろう。とはいえニーズがあるからこそこれらベンダーがサービスを提供しているわけで、ユーザーはそれなりに大きな投資をしてでもCRMを組織に定着させようとしている。

 実はこのCRMの組織への定着化が進まない問題は、1990年代後半にあったSiebel CRMなどのCRMパッケージ製品の導入ブームの頃からほとんど変わっていない。そう指摘するのは、Vymo Japan 代表取締役 カントリーマネージャーで、元DataRobot ジャパン カントリーマネージャーの原沢 滋氏だ。

Vymo Japan 代表取締役 カントリーマネージャー 原沢 滋氏

 CRM、SFAの定着化を阻害する最大の要因は、営業担当者なりがデータをタイムリーにシステムに入力しないことだ。仮にデータを入れても、担当者ごとにデータの質がばらばらで、データにムラが出る。ムラがあり正確性に欠けるデータでは、それを活用して営業活動などを最適化することにつなげられない。

 これは何も営業担当者が、仕事をさぼっているからではない。営業担当者は日々顧客に電話などでコンタクトをとり、メールも送れば訪問もする。優秀な営業ほど、顧客への対応で忙しいはずだ。そのような状況の中、新たにCRMが導入され面倒な日報や月報の入力を強いられる。

 面倒な業務が増えたとなれば、積極的に情報を登録しないだろう。また購入してもらえそうな顧客とのやり取りは登録するが、上手く進んでいない商談情報は入力したくないとも思うはずだ。このようにCRMに意味のある情報がなかなか蓄積されない問題がある。

 顧客行動を予測するには、上手く進んでいる顧客とのやり取りよりも、むしろ上手く商談が進んでいない情報のほうが価値は高い。今買ってくれない顧客が、数ヶ月後、数年後に購入してくれるかもしれない。商談が成立した結果だけを見ていても、買わなかった顧客が購買へと変化する状況は把握できないのだ。営業に関わる良い情報も悪い情報も、タイムリーに蓄積するためには、コストをかけてでも組織はCRMの定着化に取り組まなければならない。

次のページ
営業活動に関する情報を自動で収集してCRMに蓄積

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谷川 耕一(タニカワ コウイチ)

EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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