「PX」の中核を担うデータ活用の社内実装 自走する組織への鍵は「小さな成功の積み重ね」
第3回:パナソニック インフォメーションシステムズ データ分析ソリューション事業部 黄地綾子氏

パナソニックグループが遂行中のDXプロジェクト「パナソニックトランスフォーメーション(通称、PX)」。「デジタルと人の力で『くらし』と『しごと』を幸せにする」をテーマに、ビジネスモデルや業務プロセス、組織カルチャーを変革し、事業競争力の向上を目指している。今回取材したパナソニック インフォメーションシステムズ データ分析ソリューション事業部 黄地綾子さんは、データ活用の領域からPXを推し進めるキーパーソンだ。
PXとデータ活用の現在地
酒井真弓(以下、酒井):2021年にスタートしたPX。どんな取り組みなのでしょうか?
黄地綾子(以下、黄地):PXとは、徹底的なIT活用によってパナソニックそのものを変革するプロジェクトです。今は「PX1.0」が進行中です。社内ではDXの基礎固めとか耐震補強と言っていますが、2022~24年度の3年間で1240億円をかけてIT基盤を整備します。
ただ、ITだけ新しくしても数年で陳腐化してしまいますよね。ですから、ITの変革と同時に、オペレーティング・モデルやカルチャーの変革も進めています。

PXは「ITの変革」「オペレーティング・モデルの変革」「カルチャーの変革」の3階層で推進されている
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次は、データドリブン経営を加速していきます。あらゆる現場で当たり前にデータが活用される組織を目指し、グループ横断のセルフサービス型データ分析プラットホーム「DIYA(ダイヤ)」を提供しています。DIYAとは「Do It Yourself Analytics」の略で、「データの山からダイヤモンドの原石を見つけ出す」という意味も込めています。
酒井:DIYAではどんなことができるんですか?
黄地:これまでのデータ分析は、外部の専門家に限られたデータをお渡しし、そこから得られた示唆による意思決定にとどまっていました。しかし、本当の意味でデータを価値に変えるには、業務を最も理解している現場が自らデータを分析し、分析と意思決定を一体化させる必要があります。そこで、DIYAはグループ内の様々な業務アプリケーションから使いたいデータをすぐに取り出し、分析できるようにしています。
具体的には、データを蓄積・加工するためのデータウェアハウス(DWH)に加え、セルフ分析基盤としてTableau、Power BI Premium、SASなどを提供しています。

パナソニックグループ横断のセルフサービス型データ分析プラットホーム「DIYA」の全貌
データ活用の目的やユーザーのスキルに応じて、どのツールを使えばいいか相談しながら進めている
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本当はデータレイクのようなプラットホームにしたいのですが、数十万項目に及ぶ複数のアプリケーションが動いているので一朝一夕にはできません。ここは、これから頑張っていきたいポイントです。
酒井:データのCoE(Center of Excellence)みたいですね。
黄地:そう名乗ってはいませんが、近いかもしれません。グループ各社、各部門が個別でデータ分析をしていてはもったいない。私たちが集中管理することで、メンテナンスが楽になり、ツールのライセンス管理や価格対応力のメリットも出せるようになります。

最大のメリットは、私たちにノウハウがたまること。ある事業部が困っていたら、「向こうの事業部ではこうやって解決しましたよ」とアドバイスができるようになりました。グループ全体の課題やノウハウを集積し、還元できる──これが、この仕事の一番の醍醐味ですね。
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酒井 真弓(サカイ マユミ)
ノンフィクションライター。アイティメディア(株)で情報システム部を経て、エンタープライズIT領域において年間60ほどのイベントを企画。2018年、フリーに転向。現在は記者、広報、イベント企画、マネージャーとして、行政から民間まで幅広く記事執筆、企画運営に奔走している。日本初となるGoogle C...
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