顧客体験の質を左右するパーソナライゼーション
セールスフォースが全世界の一般消費者と法人顧客を対象に実施した年次調査「コネクテッドカスタマーの最新事情」の結果によれば、製品やサービスよりも体験の提供を重視するとした回答が全体の88%になった。この結果は、2020年の同調査結果と比べて8ポイントの上昇だという。企業には消費者の期待に応える質の高い顧客体験の提供が益々重要になってきた。最初に登場したセールスフォース・ジャパン 専務執行役員 笹俊文氏は「その実現のためには、あらゆる顧客接点から瞬間を捉え、個々のお客様に感動をもたらすような場を作るべきだ」と述べ、「“瞬感”を作る」と表現した。
「瞬感」を実現するには2つのポイントが重要だ。1つはお客様1人ひとりに合わせてパーソナライズした体験を提供することである。例えば、ECサイトでは1万円だった購買金額が、店舗では1万5千円になったとする。店員との対話の途中で気持ちが変わり、追加の購買につながったのかもしれない。もし、ECサイトでも同じようなコミュニケーションができれば、売上を伸ばすことができるかもしれない。そのためにはお客様それぞれを理解するパーソナライゼーションが必要になる。
その前提が顧客データを統合する基盤を持つことだ。しかし、セールスフォースの別の調査結果によれば、顧客データが平均で35のデータベースに分散していることもわかった。この分断はパーソナライゼーションの阻害要因になる。もう1つ、パーソナライゼーションの実践で重要なことがリアルタイム性である。店舗と同様の体験をオンラインでも提供するには、収集したデータをリアルタイムに利用できる基盤が必要になる。セールスフォースが、Sales Cloud、Service Cloud、Marketing Cloud、Commerce Cloudのような同社アプリケーション製品のデータを連携させ、リアルタイムにパーソナライズしたオファーを提供できる顧客データ基盤製品「Salesforce CDP」を提供するのはそのためだ。
Salesforce CDPを使えば、店舗での顧客とのコミュニケーションを通じて得たデータから、ビーコンから得た来店客の動線データ、コールセンターでの問合せ履歴、メールやWebページの閲覧履歴、モバイルアプリのプッシュ通知への反応、ECサイト上での商品ページの閲覧履歴、お気に入りの登録、カートへの追加、購入した商品の内訳に至るあらゆるデータを集約できる。セールスフォースが狙うのは、企業があらゆる顧客接点から「瞬感」を容易に届けられるようなサポートである。