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「3年でほぼ全ての金融機関の参画目指す」長年の課題を打破できるか、金融データ活用推進協会の方策とは

AIはもう当たり前。いかに金融データを活用していくべきか

 ここ数年、さまざまなフィンテックサービスが登場している一方、メガバンクを中心とした金融機関によるデータ活用のスピードが遅いと感じている人もいるだろう。この背景には、金融機関同士の交流が少なく、情報やノウハウの共有がされていなかったことがあるという。各金融機関が個別に取り組んでいるため、なかなか金融データの活用が進まないという状況を打破するため、金融データ活用推進協会が設立された。業界のトップランナーたちが参加し、いくつもの委員会が立ち上げられ、目標へ向けた取り組みが進んでいる。金融データ活用推進協会が今取り組んでいること、そして今後の展望を聞いた。

金融業界のデジタル活用を底上げするために、業界内のコミュニティを社団法人化

 金融データ活用推進協会(FDUA)は、金融業界のデータ活用における水準の向上を目的に組成され、勉強会や意見交換会などを通して、さまざまな技術やノウハウを金融機関で共有できるよう取り組んでいる。

 同協会の前身組織は、2020年12月から活動していた「金融事業×人工知能コミュニティ」。このコミュニティは大手金融機関のメンバーを中心としたものであり、各行の共通課題として“横のつながりをつくる”ことを認識していたという。つまり、金融機関ごとに壁を隔てており横のつながりがなく、各社が似たような課題を抱えながら独自に取り組んでいたのである。

 当然、競争領域であれば共有はできない。しかし代表理事の岡田拓郎氏(デジタル庁)は「たとえば、人材育成や基本的なデータの取り扱いといった領域であれば共有は可能です。そうした情報共有をすることがお互いのためになり、どんどんと“横のつながり”を広げていくことで業界全体の底上げになると考えています」という。そうしたビジョンをもって金融データ活用推進協会の設立に至っている。

金融データ活用推進協会 代表理事 岡田拓郎氏
金融データ活用推進協会 代表理事 岡田拓郎氏

 前身のコミュニティは、いわば最先端のデータ活用事例を共有するための場だった。参加メンバーも、業界のAIシステム導入などでトップ争いをしている猛者ばかりである。一方で、このコミュニティだけで情報を共有し、意見交換をしても、“金融業界そのもの”は決して盛り上がらない。そこでコミュニティの一般社団法人化を推進。組織化されることで金融機関が参加しやすくなったという。

 「協会が今後予定しているコンペティションの審査員にも、金融機関の役員クラスの方が参加することが決まっています。結果的に、社団法人化してとてもよかったと思っています」(岡田氏)

 協会の設立にあたって必要としたのが、「実務のわかるプロフェッショナル」。そのため、5年後10年後も金融業界のデータ活用を引っ張っていけるトップランナーに声をかけ、理事として参画してもらっている。そのうちの一人が、顧問として参加している野口竜司氏(ELYZA)である。野口氏は著書に『文系AI人材になる―統計・プログラム知識は不要』(東洋経済新報社)を持ち、多くのAIプロジェクトに携わるAI活用の第一人者だ。

 顧問として参画した理由について野口氏は、「自分が金融業界の人間ではないからこそ、他業界の動向や業界を越えたトレンドなどを発信できる」と説明する。そして「金融業界では特に予測系のAI、そのためのデータ活用が散見されます。今後は、会話系AIなどのトレンドについて、どのように浸透させ活用していくのかを提案する役割も担っていると考えています」と語った。

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まず必要なのは金融業界内の情報の共有、それが正常な競争のスタートになる

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この記事の著者

森 英信(モリ ヒデノブ)

就職情報誌やMac雑誌の編集業務、モバイルコンテンツ制作会社勤務を経て、2005年に編集プロダクション業務とWebシステム開発事業を展開する会社・アンジーを創業した。編集プロダクション業務では、日本語と英語でのテック関連事例や海外スタートアップのインタビュー、イベントレポートなどの企画・取材・執筆・...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

岡本 拓也(編集部)(オカモト タクヤ)

1993年福岡県生まれ。京都外国語大学イタリア語学科卒業。ニュースサイトの編集、システム開発、ライターなどを経験し、2020年株式会社翔泳社に入社。ITリーダー向け専門メディア『EnterpriseZine』の編集・企画・運営に携わる。2023年4月、EnterpriseZine編集長就任。

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