SAS Institute Japanは、10 月 21 日「SAS INNOVATE」と題したイベントを開催した。 SAS Instituteのブライアン・ハリスCTOが 「Move the World Forward」と題した基調講演でSASの将来的ビジョンを語った。
冒頭にはSAS Institute Japan常務執行役員 営業統括本部 本部長の宇野林之氏が登壇。「日本語の危機とは危険と好機と両方の意味がある。現在の危機は勇気とオープンマインド、そして豊富なデータによる洞察力によって乗り越えられる」と語った。続いて登壇したCTOのブライアン・ハリス氏は、Covid-19以降の状況をインターネットバブルの崩壊や、9.11、リーマンショックに並ぶ「ブラックスワン」だとする。
「サプライチェーンの混乱と輸送コストの上昇、金融政策によって米国では1981年以来最も高いインフレを記録している。もうひとつの大きな波はESGだ。世界中の組織が、環境、社会、ガバナンスの取り組みに大きな努力を払っている。これらすべてが、ビジネスの世界での顧客の行動、購買力、投資判断に変化をもたらす」(ハリス氏)
そして、こうした時代の中で「クラウド」と「信頼できるAI」が重要になると言う。クラウドについては、ビジネスの俊敏性やレジリエンスという面での期待。信頼できるAIでは、データの意味を理解すること、アナリティクスの説明可能性と透明性が鍵だとする。そのステップとして、1)信頼できるアナリティクスのパートナー、2)永続的なデータ&アナリティクス戦略の実行、3)意思決定の規模を拡大の3点をあげた。
事例として紹介されたのは、米国ジョージア・パシフィックだ。SAS Viyaの導入により計画外のダウンタイムを30%削減、設備効率を10%改善、SAS上で実行される15,000 のモデルをSAS Viya上で展開した。また日本での事例としては、関西電力がある。同社はSAS Viyaを使用することで、ユーザーがSAS、Python、およびプログラミング言語のRを統合して分析プロセスを実行できるようにした。これによって電柱の損傷の予測が可能になったという。
キーノートの後では、プレスに対してのラウンドテーブルがおこなわれ、ブライアン・ハリス氏とシニアVPのジャレッド・ピーターソン氏が出席した。
両名は、自動化、AI、機械学習、意思決定などの一連のプロセスを自動実行する「アナリティクス・ライフサイクル」の紹介を行った。またSASのソフトウェアは、統計学から出発していることもあり、これまで分析の専門家やデータサイエンティストを対象にしてきたが、今後はより多くの人が使えるようにすることを強調し、その取り組みの例としてSAS Viya のMicrosoft Azure Marketplaceでの提供を開始したことを挙げた。
さらにアナリティクス製品の競争環境が激しくなっていることについては「金融業界の例では、私たちは、データの発見からモデルの展開までを可能にするプラットフォームを持っており、そのモデルは大きなクエリであるSnowflakeやRedshiftに接続することができる。新たな製品群も、私たちにとっては、エコシステムの一部。私たちはAWSやGoogle Cloudと強力なパートナーシップを結んでいる」(ピーターソン氏)として、オープンソースや他社製品とも連携していく姿勢を示した。
またこれまで非公開企業であったSASは、2024年までにIPOを予定していることを発表している。IPOに関する質問では、「これまでプライベート企業としての制約の中で培ってきた財務面での強さがある。この財務的な強さによって、他の上場企業よりも長期的な戦略が可能だ」と自信を見せた。CEOのジム・グッドナイトが考える従業員の幸福と顧客の成功という目標はIPOによって変わることはない」(ハリス氏)と答えた。