カスタマーサクセスで実現する持続ある成長
山田ひさのり氏(以下、山田氏):2013年から続いているGainsight社主催のイベント『Pulse』は、毎回どのようなメッセージを打ち出してくるのか、楽しみにしています。
絹村悠氏(以下、絹村氏):「カスタマーサクセスで実現する持続ある成長」が今回のPulseのキーワード。今回、CEOのニック・メータは、それを実現するためのプレイブックとして、『持続性ある成長への六つのステップ』を発表しました。
アメリカの今の景気動向を見ていると、全体的に少しビジネスが停滞するような感じになっています。しかし、その中でも、「カスタマーサクセスに対しては投資を継続していく」と答えるお客さまが数多くいることが、我々の調査でわかっています。
カスタマーサクセスに投資することで、持続性のあるビジネスをつくっていける。そのエンジンとしてカスタマーサクセスをもう一段ステージアップしていくんだという思いを、今回のPulseのメッセージに込めています。
<ステップ1>予期せぬ事態を防ぐ
絹村氏:突然の解約を防ぐには、早い段階で予兆を検知しておかなければなりません。ヘルススコアやチャーンを予測するための数字に基づいたアラートをしっかりと検知する。そして、検知した後にどのような行動を取っていくのか、リスク管理のプログラムをつくり込み、早いタイミングで解約の芽を潰していくことが重要です。日本のマーケットでは、このような考え方がある程度浸透してきていると感じられますか?
山田氏:前職のSansanも含めて、カスタマーサクセスは、IT大手企業ではだいぶ浸透しています。「そこに活路を見いだそう」「ベーシックなものにしていこう」という気運を感じますね。ただ、スタートアップについては、データの蓄積も仕組みもないのが現状です。事業成熟度によって差があるという印象です。
絹村氏:既存顧客が100社くらいであれば、自分たちの感覚値でカバーできますが、それが1,000社、1万社になってくると、仕組みで検知することが必要です。データは持っているはずなので、そのデータをうまく組み合わせて仕組みをつくることが大切になります。
山田氏:仮説を持つことはできても、ファクトと結びつけて確証を得ることが難しい。ある程度の事業年数と、チャーンしたときのインタビューがしっかりできていないと、なかなか結び付けることができないようです。
絹村氏:たしかに、つくること自体は簡単でも、それが本当に合っているかどうかの検証が大変です。ヘルススコアは、一度つくったら終わりではなく、ブラッシュアップして、進化させていくプロセスが必要になります。お客様の声や、実際に対面しているカスタマーサクセスチームの声を反映し、データだけなく定性的な情報も組み合わせることが重要です。