セキュリティ面での安心感
他にもセキュリティ面の安心感もある。アドビはグローバル企業だが、日本の顧客であればAdobe Document Cloudのデータは日本にあるデータセンターに保存される。アドビ以外にも電子署名サービスを提供するベンダーはあれど、データの保存先が日本のデータセンターとは限らない。
国内にデータセンターがあり、震災対策やセキュリティ対策も行われていることから、ソブリンクラウドの議論が高まっている昨今においては、こうしたインフラ面での安心感もある。
企業の業務で使うゆえに、セキュリティ、ガバナンス、コンプライアンスに関するグローバル基準に準じているのもアドビの特徴であり、強みだ。日本なら情報セキュリティのISO/IEC 27001、米国ならHIPAA、FERPA、GLBA、米国食品医薬品局の21 CFR part 11など、国や業界特有の規制にも幅広く対応している。
加えて同ビジネスデベロップメントマネージャーである岩松健史氏は、アドビの強みとして非改ざん性を強調する。
「セキュリティに含まれますが、ドキュメントの非改ざん性もアドビが評価されるポイントです。ISOで定義された形で、最終署名者が合意したドキュメントは合意以降に一切改ざんされていないことを保証できます。同時にアクセス権(関係者のみ閲覧許可、閲覧のみで編集不可など)も設定できます。編集不可でも、サードパーティー製品を使えば可能ではないかと考える人はいますが、もし改ざんされた場合は、PDFの表示にて改ざんがわかるようになっています」
そして機能面の優位性もある。電子署名に関するアプリケーションは企業により様々な要件があるため、アドビではSalesforceやServiceNowなどの各種業務用のツールと連携するためのコネクタ(API)が充実している。
営業支援ツールと連携すれば、業務の最初から最後まで一貫して紙を用いることなくワークフローを進めることができる。最近ではマイクロソフトがアドビとの連携強化を発表しており、両社の共同開発によりコネクタはよりネイティブに実装され、利便性も高まることが期待される。
現時点では海外のみ利用可能(日本では準備中)だが、Adobe Acrobat Readerのモバイル版アプリには「Liquid Mode」が登場した。
一般的にPDFはレイアウトがしっかり組まれているため、PCでは見やすくてもモバイル端末ではピンチアウト(拡大)しないと見づらいケースもあった。しかし「Liquid Mode」では、ボタン1つでテキスト、画像、表などをモバイル端末の画面に合わせて自動的に組み直す。アクセシビリティの観点からもパーソナライズされた閲覧体験への期待は多く、これはPDFのユーザー体験が大きく変りそうだ。