生成系AI(ジェネレーティブAI)で企業の意思決定はどう変わるのか?データドリブンな経営をめざす経営者は、ChatGPTとどう付き合えば良いのか? ガートナーのアナリスト ガレス・ハーシェル氏に聞いた。
データドリブンな意思決定は万能か?

──組織におけるデータドリブンな意思決定とは、一部のマネージャーだけが行うものでしょうか。それとも誰しもが行うものなのでしょうか。
ガレス氏:組織の中の誰もがデータで意思決定を行うことができると思います。とはいえ、全ての意思決定をデータドリブンにするべきだとは思いません。また全ての意思決定者がデータドリブンに意思決定を行うべきだとも思いません。人は皆、日常生活の中でも仕事の中でも意思決定を行う機会があります。講演では意思決定の4つのアプローチを紹介しましたが、データを重んじるべきものがある一方で、データに影響されてはいけない領域もあります。場合によってはデータを使うこともあれば、使わないこともあるなど、様々なケースが考えられます。
──経営者が新しいビジネスに参入する場合、判断材料に使えそうな過去のデータは組織の中にはない場合がほとんどではないでしょうか。
ガレス氏:データがない状況で、意思決定を行わないといけない場面は実際にはたくさんあります。iPadのような新製品を市場に投入する前、判断材料になるデータがあったでしょうか。基準となるデータポイントはあったにしろ、データだけで参入するか、しないかを判断するのは難しい。なので、データドリブンな意思決定を行わないことに経営者は罪悪感を感じる必要はありません。
ただし、そんな時でも、経営者は自問してみることは必要です。仮に判断材料になるデータがあるとしたら、自分の行動が変わるのか。その結果、やろうとすることを早くしたり、投資の金額を増やしたり、減らしたりする判断、あるいは積極的にやるのか、慎重に進めるべきかの判断ができるのではないかと思います。
経営者が意思決定を行う場合、データだけではなく、自分の経験や専門家の考えなどの要素も用いて行います。これらの要素はある意味仮説や仮定にすぎません。ですから、その検証ができるデータが存在するかを確認し、データに基づき自分の仮説を検証し、実証できれば進める。データが仮説と矛盾するようならば、再検討する姿勢が責任ある意思決定で求められるでしょう。例えばあるレストランチェーンがある地域にレストランを作ろうと考えたとします。データを見ると、住民の人口構成が他のエリアとは違うとわかった。だとすると、自分たちの得意としている業態とその地域の住民の食べ物の好みは違うとわかるかもしれませんよね。その場合は再考する必要が出てきます。
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冨永 裕子(トミナガ ユウコ)
IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタン...
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