ビジネス変革を導く新提案:RISE with SAPの戦略とビジョン

Topcon Positioning Systems Senior Vice President, IT クリス・カウレス(Kris Cowles)氏
Henkel AG Chief Digital & Information Officer マイケル・ニレス(Michael Nilles)氏
Women’s Tennis Association President ミッキー・ローラー(Micky Lawler)氏
Nestle Head of Information Technology and Nestle Group CIO クリス・ライト(Chris Wright)氏
SAP Product Engineering and Member of the SAP Executive Board トーマス・ザウアーエスィッグ(Thomas Saueressig)氏
RISE with SAP
多くのCIOが取り組む重要課題は、ビジネスモデル変革およびそれを前提とするビジネスプロセス変革へのビジネスへの貢献である。しかし、その実現の障壁として立ちはだかるのが、複雑で標準化されていないビジネスプロセスである。現状維持の方針を選択すれば、クラウド移行でもカスタマイズ開発が増え、その後のビジネス環境変化に適応できないレガシーシステムが温存されてしまう。初日のGlobal Keynoteに登壇したCEOのクリスチャン・クライン氏は「SAPの元COOとしての立場から言わせてもらえば、これこそがRISE with SAPを提供することになった理由です」と、問題意識を説明した。このRISE with SAPとは、SAP S/4HANA Cloudを中核に、SAP Business NetworkとSAP Business Technology Platform(以降、BTP)を加え、移行サービスなどと共に、既存顧客に対し、包括的なソリューションを提供するものである。
続けてクライン氏は、日本企業の状況にも共通するエピソードを紹介した。同氏が最近訪問した米国の顧客は、数年に及ぶレガシーERPのクラウド移行を終えたばかり。その企業が選択した手法は既存システムをそのままクラウドに移行した後、徐々に最適化を進める「リフト&シフト」であったという。クラウドへの移行を進めている最中でも、CIOには多くの要求が来る。この企業では、移行中でも短期的要求に応えるため、多くのカスタマイズ開発を実施しなくてはならなかった。SAPの試算によれば、移行と追加のカスタマイズ開発に要する費用は、標準的なERPソフトウェアを導入する場合と比べ、約30倍に上る。かつ、クラウドリフトは終わっても、プロセスの標準化は終わっていないため、オンプレミス時代以上の生産性向上は期待できない。システムの複雑性が温存されているため、四半期に1度の機能アップデートの迅速な利用は難しい。さらには、次のバージョンへのアップグレード費用も高額なものになる。
このような悪循環を断ち切るため、SAPは「Intelligent Enterprise」というビジョンを掲げ、企業のビジネス変革を包括的に支援するRISE with SAPを提供することにした。「RISE with SAPにBTPが含まれているのは、顧客固有のビジネスプロセスを尊重するため」とクライン氏は説明する。SAP BTPはクラウド上のSAPアプリケーション向けに最適化されたプラットフォームで、ビジネス環境への柔軟性を担保しつつ、プロセスの標準を保つ「クリーンコア」を実現できる。