製品提供を始めて10年、DevOps浸透に手応え
──DatadogはDevOpsの問題を解決するために、開発担当と運用担当だった2人が2010年に創業したとのことですが、最初からクラウドにフォーカスしたのには何か理由があったのでしょうか?
2010年に創業後、2012年に最初の製品をリリースしました。Datadogのユニークな点は最初からクラウド上に構築し、クラウドのモニタリングが可能であるというところにあります。当時、SaaSとしてモニタリングを提供していたものは他にはありませんでした。またクラウド──当時はAmazon Web Services(以下、AWS)しかなかったのですが、AWS環境のモニタリングができるという点でも先駆けました。クラウドはオンプレミスとは異なり、毎日稼働環境が異なります。それまでのモニタリング製品では対応できません。
クラウドはまた、開発と運用が歩み寄って協力するDevOpsが必要になる理由の一つでもあります。企業はアジリティを求めています。新規プロジェクトを立ち上げて6ヵ月後にサーバーが割り当てられるというオンプレのスピードに対し、クラウドを使えばすぐに環境を手に入れることができます。開発スピードを上げて、運用環境に早期にデプロイするというDevOpsを実践するのにクラウドは最適で、両者の相性は非常に良いのです。
──最初の製品が登場してから10年以上になりますが、DevOpsはどのくらい浸透してきたと見ていますか?
DevOps体制を進めている企業はたくさんあります。特に小規模な企業は比較的容易に新しいやり方を受け入れることができるため、スタートアップなどから実践が始まっています。大企業は古いものをたくさん抱えていることから、やり方を変更するのに時間がかかっていますが、方向性として正しい方向に進んでいると思います。
DevOpsの周辺にも考え方が広がっていますよね。財務チームがコストを管理するFinOpsや、セキュリティ担当者が加わるDevSecOpsなどです。
最近では、ビジネスアナリティクス担当者の関与も重要になっています。たとえば、旅行予約のサイト、ECサイトなど企業の売上に直結するサイトで、顧客がサイト上で何をしているのか、どこでつまずいているのか、購入時にエラーが出ているのは何故かといったことをモニタリングしたいというニーズも出てきており、我々も製品を拡大しています。これまでは、BIを使って四半期ごと、月ごとにレポートを作成していたような分野ですが、ブラックフライデーのような時期は3ヵ月も待てません。リアルタイム性が重要になっています。
これら以外にも、我々が想像しなかったような方法でも使われています。たとえば、小売店がリアルで優れた体験を提供するために、店舗のPOSシステムや店舗のWi-Fiの状態をモニタリングしているというケースもあります。
──開発と運用だけでなく、クラウドのコストを担当する財務、セキュリティ、ビジネス担当者へとターゲットを拡大している中で、製品戦略はどのようになっていますか?
Datadogは単一のプラットフォーム戦略をとっており、600以上のインテグレーションをサポートしています。それだけでなく、APIを使って接続することもできます。こうやって集めたデータに対して、開発者向け、運用向け、セキュリティ担当向けといった役割に合わせた形で処理してダッシュボードに表示します。
たとえばアプリケーションがちゃんと稼働しているかどうかを知りたい開発者や運用担当は、アプリケーションのアベイラビリティを見るためにCPUの使用率などを見るでしょう。FinOps担当なら、多く支払いすぎていないかを知るためにホストの使用率の視点で見るでしょう。セキュリティ担当なら、エラーレートやネットワークのバウンスをみて、DDoS攻撃が起きていないかをチェックするかもしれません。