システム開発のたびに工数がかさむ共通機能
アイディーエスは1996年の設立以来、数々のシステム開発を手がけてきた。受賞歴も多く、製品や技術力には定評がある。Amazon Web Services(AWS)環境構築・導入支援などAWSに特化した事業(サニークラウド)も展開しており、トップエンジニアとしてAWSから表彰されたエンジニアも在籍している。
同社は多くのシステム開発を請け負っており、ゼロからのスクラッチ開発することがほとんどだという。システムで実装しなくてはならない基本的な機能は似たり寄ったりなので、毎回ゼロからスクラッチ開発するとなると非効率にもなりかねない。開発者からしたら新鮮味がなくて面白くないところだろう。近年ではシステムで共通して使われる機能はクラウドサービスで提供されることが増えた。たとえばログイン(認証機能)なら、最近では「Amazon Cognito」やそれに類似するサービスもある。
「しかし、マスタメンテナンスはなかったのです」と力を込めて話すのは、アイディーエス 執行役員 柴田達真氏。マスタメンテナンスとは、システムで基本となるマスタデータの変更に用いる機能のことを指す。マスタデータとは、たとえばECサイトなら商品情報、会計システムなら勘定科目のように、システムが参照する基本的なデータのことだ。
もし更新頻度が高ければ、マスタデータメンテナンス機能が必要になる。システムにおける主要な機能でないにも関わらず、開発にはそれなりの工数がかかることに。更新頻度が低ければ、開発優先度が下がり、使い勝手の悪い中途半端な実装となったり、実装すらされなかったりするという。後者なら必要に応じて誰か、大抵はデータベースを操作できる(SQLが分かる)エンジニアがやることになるだろう。ただ、月末などの忙しいときに業務部門から変更を依頼されるなんてこともあり得る。それに手作業だと操作履歴が残らず、ミスが生じるなどのリスクは拭えない。
このようにマスタメンテナンスには、致命的ではないものの慢性的な課題が潜んでいる。そこで、アイディーエスではスキルがなくてもマスタメンテナンスできるサービスを提供することを考えた。このサービスを利用すれば、開発のたびにマスタデータメンテナンス機能を用意する必要がなくなり、開発工数も削減できることが見込める。
柴田氏によると、マスタデータメンテナンス機能は平均でシステム開発工数の2割を占めるという。これを削減できるのであれば、かなりのコストカットだ。単純計算すれば4000万円規模のシステム開発なら、800万円相当のコスト削減となる。
構想は10年前から。機が熟した今、満を持してリリース
実は構想自体は10年前からあったという。しかし、当時はまだ業務システムはオンプレミスが中心。そのうえ、データベースは重要な資産となるため、クラウドサービスと接続してデータを更新することに抵抗感を持つ企業が少なくなかった。今でもデータベースだけはオンプレミスに残すケースもあるほどだ。
それが「近年では開発者のマインドが変化してきました」と柴田氏。クラウド環境で業務システムを稼働させるケースが増え、クラウドサービスを利用することへの心理的なハードルはかなり下がっている。DXを背景に、内製化が進み、業務部門がローコード/ノーコードツールを使うケースも増えてきた。
開発者が使うツールもどんどん進化し、便利なものが登場している。同社 ソリューション事業部 シニアプロジェクトマネージャー 芝田勝氏は「かつてエンジニアは自分が使うIDE(統合開発環境)を固定していたものですが、今では『GitHub Copilot』や生成系AIなど、便利なものならどんどん活用しようという機運が高まってきました。セキュリティも担保されるようになり、慎重だった人も許容するようになってきたのでしょう」と話す。
いよいよ機が熟したと判断し、アイディーエスはマスタデータメンテナンスを実現するフルマネージドサービス「SMOOZ」を2023年4月に提供開始した。現在は無料トライアル版を提供しており、11月下旬からはプロプランを提供開始する予定だ。
繰り返し述べているように、SMOOZはマスタデータをメンテナンスする機能がメインとなる。ブラウザからノーコードで利用できるため、SQLを知らない非エンジニアでも簡単にデータを操作できるのがメリットだ。フルマネージドサービスで提供するため、自社内にサーバーやソフトウェアを導入する必要もない。
メンテナンスするデータベースは、現時点ではPostgreSQL、MySQLに対応している。また、データベースが稼働している環境はオンプレミスでもクラウドでもかまわない。ただしSMOOZがAWSで稼働しているため、メンテナンスしたいデータベースがAWSにあるなら「AWS PrivateLink」が利用可能で、ネットワークやセキュリティの観点から好都合だという。もちろんデータベースがオンプレミスで稼働していてもSMOOZは利用可能だ。企業のセキュリティポリシーに合わせて、VPN接続などを用意してセキュアにしておくといいだろう。今後はSQL ServerやOracle Databaseなどにも対応を広げていく予定だ。
業務効率化の観点からは手軽に更新できたほうがいいが、不正な更新はあってはならない。そこでSMOOZはユーザー権限管理機能も備えている。ユーザーごとにアクセスできる権限を細かく設定できる。IPアドレスでアクセス制限をかけることも可能なので、外部からのアクセスを制限することも可能だ。
それに監査ログ参照機能もある。手作業では更新履歴が残らないが、SMOOZであれば誰がどんな操作をしたのかログが残るので監査にも有効だ。管理体制の正当性を証明することに役立つ。
データ更新時にデータがばらつかないように、入力ルールを設定できる機能もある。デフォルト値の設定やプルダウンで選択、大文字・小文字のチェック、文字列か数値かなどのバリデーションも設定できる。データをCSVで出力することも可能で、個人情報保護などでデータにマスキングをかけることも可能だ。
現在は無料トライアルの提供のみだが、「プロプランとほぼ同じ機能が使えます」と柴田氏は言う。まずは試しに使ってみるといいだろう。
グローバル利用も想定、将来的にはEAIのような発展を視野に
SMOOZは手軽さとガバナンスで、うまくバランスをとるように配慮されている。ノーコードで非エンジニアでもメンテナンスができるようなUIに加え、権限管理や操作ログを残せるようにしている。柴田氏は「手軽にできますが、きちんとガバナンスを効かせて適切なデータ管理ができる状態にしております」と話す。
ノーコードでデータ更新できるのは非エンジニアにとってはありがたいが、エンジニアにとっては不自由さや物足りなさを感じてしまうかもしれない。「SQLのほうが楽だ」とSQLを使いたくなることもあるだろう。そのため、プロプラン販売開始後には、コマンドラインでSQLを発行できるような機能も用意する予定だ。手軽さが制限にならないように、高度さとの両立も図る狙いだ。
ところで、どのようなユーザーや環境にSMOOZは向いているだろうか。柴田氏は「ピンポイントで申し上げるなら、スクラッチからのシステム開発ニーズを多く持つ企業です。大手企業の情報システム子会社が最も向いていると考えています。こうした企業は次々とシステムを開発しなくてはいけません。DXに取り組む中で新規システムを開発しようとしているのであれば、マスタデータメンテナンス機能はSMOOZを使えば開発工数もコストが抑えられます。浮いたコストはビジネスインパクトが見込める新規機能開発に向けていただくことができます」と話す。
続けて芝田氏は「既に開発を終えたシステムでも、もちろんお使いいただけます。予算不足や何らかの理由でマスタメンテナンス機能を十分に作り切れず、エンジニアがSQLでデータをメンテナンスしているような環境であれば、SMOOZを使えば非エンジニアの業務担当者でもデータの保守が可能となります」と補足する。
データメンテナンスがSQLスキルを持つエンジニア頼みとなると、エンジニアは業務が増えてしまい、ビジネス部門は待ちが生じてしまうため、どちらにとっても幸せではない。芝田氏は「マスタデータメンテナンスはやはり保守作業となるので、SMOOZで自分たちのビジネスを拡大するほうに投資を向けられるようになるといいと思っています」と話す。
直近は対応データベースを増やしていくことに取り組むという。さらにその先について柴田氏は「機能面で見ると、複数システム間のデータ連携などEAI(Enterprise Application Integration)的な発展もありうると考えています。お客様の声をもとにサービスのロードマップを作っていきたいです。既に日本語以外にも英語とベトナム語にも対応しており、グローバルで使ってもらう想定で開発しています」と話す。
最後に柴田氏は「今は新しい技術を採用していくことで、生産性向上や付加価値向上にチャレンジできる時代です。SMOOZのように世の中にあるものを組み合わせることで、より便利になる世界を皆さんと一緒に作れたらうれしいです。まずは無料トライアルを試してみてください」と呼びかけた。
無料トライアルをご検討の方は、まずは資料ダウンロードを!
本記事で「SMOOZ」に興味を持たれた方は、SMOOZ公式サイトから資料ダウンロードやお問い合わせが可能です。クラウド型マスタメンテナンスツールでデータ管理・更新を簡単にしたい方、ブラウザ操作でデータベースのデータを管理したい方は、ぜひお気軽にご連絡ください!