データ活用の高コスト化が課題に 業界全体での解消を目指す
2023年9月、Snowflakeが主催する「DATA DRIVERS AWARDS 2023」において、「Collaboration」というアワードを受賞したインテージ。その背景には、顧客が販促コストを可視化するためのダッシュボード構築、商品・店舗マスターデータの「Snowflakeマーケットプレイス」への提供があり、異なる組織が協働するための活動が評価された。
販促コスト可視化ダッシュボードは、販促費の妥当性を可視化・最適化するため機能をもっており、現在はPoCとして効果測定を実施するフェーズにある。また、各データを構造化することで、統合データ基盤の構築も進めているという。このとき、インテージが保有する大量データを分析・指標化するためにもSnowflakeのテクノロジーは欠かせない。
ダッシュボードの開発を担当しているインテージ 事業開発本部 流通ユニット ビジネス企画室 室長 今井康善氏は、「データ活用における共通課題は、データ活用コストが高すぎるということ。たとえば、消費財メーカーは『データ活用によって、より生産性を高めたい』という共通認識をもっていますが、各企業が同じデータ、たとえばPOSデータなどを手作業で収集・加工した上で、活用しています。これでは極めて非効率です」と述べる。業界全体で扱うべきデータは、1つのプラットフォームに集約した方が車輪の再発明とならない。
同社 事業開発本部 流通ユニット データ事業開発部 マスターグループ グループリーダーの田村真丈氏は、「我々は長年にわたり購買データをハンドリングしてきており、統計データを加工する中で大量データの扱い方、クレンジング技術を20年以上にわたり磨いてきました。経験やノウハウという側面からも販促費削減に貢献できると考えています」と説明。販促コスト可視化ダッシュボードによって、消費財メーカーなどは営業提案をより効率的に進められると自信をのぞかせる。
また、インテージが保有する重要資産とも呼べるものがマスターデータだ。購買データにおいて「何を買ったか」という商品の特定を可能にする商品マスターと、「どこで買ったか」という場所の特定を行うための店舗マスターをもっている。
この事業の核とも言えるマスターデータをSnowflakeマーケットプレイスに提供しており、「マスターデータは長く門外不出の存在でしたが、多くの企業からの要望に応える形で外部販売を行ってきました。現在は、Snowflakeマーケットプレイスで提供することでリアルタイムにデータを共有できるようになっています」と田村氏。生活者を起点としながら、消費財メーカーと流通・小売をつなげる役割を果たしたいと考えている同社の信念があるからこそ、“社会課題の解決に貢献したい”という想いを実現するためのプラットフォームとしてSnowflakeを選んだという。
「データに基づいてサポートすることで効率の良いオペレーションなどに貢献していきます。生活者も含め、世の中をより良くしていくことが我々の抱くミッションです」(昆氏)
個社ごとの課題解決を積み重ね、業界全体の資産としていく
前述したCollaborationの受賞は、インテージが組織を超えたデータ連携を志向する姿勢が評価された結果だ。昆氏は「我々のプロジェクトは道半ばであり、これから新しい世界を創出していきたい。そのためには社会基盤として機能するデータプラットフォームが必要だと考えていますが、1つの企業だけが独力で実現することは難しいでしょう。だからこそ、私たちのような企業が中立的な立場で業界をつなげていきたいのです」と述べる。
消費財メーカーや流通・小売業界という大きな枠組みでの課題を見ると、個社ごとに抱える小さな課題と重なる部分もある。だからこそ、インテージでは企業課題を支援することで、業界全体へ貢献していく。田村氏は「たとえば、公益性の高いテーマであれば、業界全体での取り組みを促進して、連携を図る必要もあるでしょう。こうしたケースにおいて、Snowflakeの技術がどのように活用されるのか。そこも明らかにしていきたいですね」と意欲を見せる。
最後に今井氏も「多くのプレーヤーが存在する中、社会課題の解決は困難を極めるでしょう。しかし、業界の発展のためには他に選択肢がないと考えています。Snowflakeをはじめ、多くの企業が協力することで新たなヒントや打開策を見つけていくべきです」とメッセージを投げかけた。