SaaSが伸びれば、ファイルやデータ連携の商機増える
世界規模でSaaS市場は急速に成長しており、直近では生成系AIを採り入れたサービスも目立つ。「SaaSが増えればデータが分散し、そうしたら(分析できるように)統合したいという要望も生まれるため、我々のチャンスは増えていきます。もちろん、その分だけ競合も増えます」とHULFTの丸山昌宏氏は言う。
セゾン情報システムズがアメリカにグループ子会社(米国法人)HULFT社を設立したのは2016年4月。社名はセゾン情報システムズが長らく育ててきたファイル転送ツールからきており、アメリカに拠点を構えて同社の強みとなるファイル転送やデータ連携のサービス、ソリューションをグローバル展開しようという意気込みがうかがえる。
少し前の話になるが、2015年にセゾン情報システムズは、ラスベガスで開催されたAWS re:Inventで「Think Big」賞を受賞したことがある。世界のAWSビジネスパートナーの中から9社しか選出されない「AWS Leadership Award」の受賞であり、グローバルで高い評価を受けた証しとも言えるだろう。主にデータ連携ツール「HULFT」をクラウド分野に展開した取り組みが評価されており、当時は「Saison Information Systems」という社名で受賞していた。グローバル展開に向けて、よりシンプルかつインパクトのある社名を選んだようだ。
re:Inventでの受賞を振り返っても「HULFT」はプロダクト単体でグローバルでも十分評価されるものだ。アメリカでHULFT社が設立される2016年頃、HULFTのユーザーは日本企業が大半だったかもしれない。しかし、顧客となる日本企業は世界各国の関連企業とのファイル転送でHULFTを使っており、“HULFTに触れたことのある”企業は着実に世界中に広がっていた。そうした当時の状況を丸山氏は「日本のお客様に世界中で使っていただいている、その時点でニーズがあると感じていました」と話す。
今ではSaaSの利用が増えただけでなく、多くの企業がデータドリブン経営を目指している。加えて、アメリカではM&Aが多いため、データを統合したいというニーズも確実にあるだろう。国産ソフトウェアが世界進出するケースはそう多くないものの、HULFTやDataSpiderの実績を考えるとグローバル進出は無謀な挑戦ではないと言える。
HULFT社では、まずは一定の市場規模があり、かつデータが分散している製造業(とそのサプライチェーン)に狙いを定めた。システムがレガシーのまま残っている企業が多い点においてもHULFTとの相性の良さがうかがえたからだ。
なお、HULFT社の設立当初はファイル転送(HULFT)をメインとしてスタートしたものの市場規模を見たとき、ファイル転送と比べてデータ統合が3倍ほど大きいこともあり、途中からデータ統合をメインに据えている。実際、エストニア政府の統計庁も70以上存在するデータソースの統合のためにHULFTを活用するなど、データ統合の事例を着実に増やしているという。