【特別鼎談】“開発と運用の壁”を越えた「DevOps」はなぜ実現できないのか ツール導入の先を考える
Dynatrace×Red Hat×SCSKによるディスカッションから探る
まずは段階的に取り組むことが肝要に DevOpsの第一歩とは
クラウドネイティブ環境への移行が進んでいるとはいえ、すべてのITインフラをモダナイズできるわけではない。当然ながらレガシーシステムも共存していくため、それらの運用効率化も必要だ。そして、レガシーシステムを堅牢に運用するためのノウハウは、運用に長く携わってきた“なんでも知っている運用担当者”に蓄積されている。
「そうした担当者の知見をわかりやすい形でコード化できれば、その方個人ではなくチームのナレッジとして管理しやすくなります」と手塚氏。コード化さえできれば、レガシーシステムの運用も属人化せず組織としてAnsibleで自動化できるからだ。「コンテナ化で得られるメリットが少ないシステムは、優先度にあわせて最適なソリューションで段階的に運用を自動化していくべきでしょう。そのためのツールはもちろん、コンサルティングサービスも提供しています」とも言う。
また、Dynatraceでは、“ユニファイド(統合)”がキーワードとなる。「これはアプリケーションとインフラ、さらにはセキュリティなどの監視データを1つのプラットフォームに統合することを指していますが、データとデータがすべて有機的につながる意味合いもあります」と渡邊氏。開発と運用の間にはどうしても大きな壁がある。だからこそ、Dynatraceのようなプラットフォームを利用し、開発側にどのような課題があるかを運用側が容易に分析することは大切だという。
「AIがシステム環境を自動で分析することで、アプリケーションやインフラのどこに問題があるのか。それぞれのデータをつなぐことで根本原因を明らかにします」(渡邊氏)
ある顧客でアプリケーションの処理が大きく遅延する障害が発生した際、アプリケーション側からは何が原因なのかまったくわからず、原因究明のための切り分けもままならなかったことがあった。そこで「Dynatraceを導入したところ、すぐに根本原因が明らかになりました」と粟津氏。このケースではアプリケーションのインフラ側には問題がなく、連携していたSaaS側の処理が影響していたとすぐに判明し、結果的にインフラに手を入れずにSaaS事業者との調整だけで対処できたという。一般的にアプリケーションの処理が遅くなると、インフラを疑いがちだ。そのような経験則に基づいた対処だけでは、このようなケースを解決することは難しかっただろう。

ネットワークプロダクト第三部 営業第二課 粟津嘉大氏
実際に粟津氏はDynatraceをレッドハットのプラットフォームと連携させることで、障害からの自動復旧やオートスケーリングを容易に実現できることを目の当たりにしている。このような仕組みがシステムの運用管理に携わっていた4、5年前にあれば、当時の手間と苦労は大幅に削減できたとして、「Dynatraceとレッドハットのプラットフォームはとても相性が良く、DevOpsやNoOpsといった組織文化の醸成も容易になるでしょう」と自信を見せる。
特にAnsibleは自動化したものをサービスとして公開できるため、「DynatraceのAPIコールでキックし、問題箇所を自動復旧するような連携が容易に実現できます」と手塚氏。どこからでも自動化のファンクションを呼び出して実行できることから、DevOpsの潤滑油のようなものだとも言う。
加えて、現状のDynatraceのAIは「因果推論(Causal inference)」と呼ばれる因果関係で推測を行うAI技術が使われている。これに加えて生成AIの活用にも力を入れており、自動化のシナリオ作成における工数を大幅に削減可能だ。ChatGPTのような質問に答えるような汎用的な生成AIではなく、運用の自動化と効率化に特化した独自の生成AI技術が用いられていることも特筆すべき点である。
セミナーでわかる! Dynatrace×レッドハット×SCSKで「運用自動化」実現へ
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など、運用にかかわる課題について、AIを活用することで解決できた“成功事例”に基づき、解決の具体策をお伝えします。ITシステムの運用に課題を感じている方は、ぜひ奮ってご参加ください!
Dynatraceやレッドハットのプラットフォームを上手く組み合わせることで、統合的な価値を継続的に発揮できるようにする。「統合されたDevOpsのためのソリューションが、日本企業には極めて重要です」と渡邊氏。その実現にはDynatraceとAnsibleを組み合わせた構築・導入支援をはじめとする、幅広いカバレッジのあるSCSKのようなSI企業の存在も欠かせない。
各ツールが技術的に連携できるだけでなく、組織としてDevOpsを実現するためにはどうすべきか。そして、ビジネスに寄与できるような俯瞰した提案ができるかが3社にとって日本企業の運用自動化を実現し、DevOpsを定着化させるための鍵となるだろう。

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谷川 耕一(タニカワ コウイチ)
EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
提供:Dynatrace合同会社、SCSK株式会社
【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社
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