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SAP HRMS 2024年アップデート:生成AIとセーフティスキャンで人的資本情報開示義務に対応

 人的資本情報の開示義務化に対応して、SAPは人材管理製品の機能を充実させ、企業が直面する複雑な課題を解決するための手段を提供している。SAP SuccessFactors、S/4HANA、Fieldglass、Qualtricsの各種データを含む、人的資本経営に関連する広範な情報をSAP Analytics Cloudに集約し、統合・可視化することで、企業の戦略的意思決定を支援するソリューションについて、SAPの人事関連製品の責任者に解説してもらった。

人的資本情報開示化にSAP製品はどう対応するか

SAPジャパン株式会社 人事・人財ソリューションアドバイザリー本部 本部長 佐々見直文氏
SAPジャパン株式会社 人事・人財ソリューションアドバイザリー本部 本部長 佐々見直文氏

 2023年3月期決算から、上場企業などを対象に人的資本の情報開示が義務化された。制度対応以上に企業に求められているのは、激しい変化の中でも長期的に価値を創出する企業であり続けることであり、その鍵になるのが人的資本の最大化だ。「投資家が本当に求めていることは、人的資本の最大化に企業がどれだけ投資をし、どれだけの成果を挙げたかをストーリーにして語ってもらうこと」と、佐々見氏は指摘する。そのためには、プロセスをデータに基づいてモニタリングし、継続的な改善を行うことが前提になる。これを鑑み、SAPは人材管理製品の機能強化を進めてきた。

 人事システムの歴史を振り返ると、給与計算や申請処理の効率化から始まり、最近では人に関する幅広いデータの管理に移行している。人的資本情報開示のガイドライン「ISO 30414」では、11領域の中でも「採用/異動/離職」に関する指標が多くを占めるが、リーダーシップスコアや人材開発コストなどまでの開示が求められるようになった。業務範囲も幅広く、旧来の人事システムからデータを収集、加工し、公開すればすむ話ではない。

 SAPでは、SAP SuccessFactorsにある人事、組織、給与データやタレントマネジメントデータから、SAP S/4HANAの売上/費用のデータ、SAP Fieldglassの外部人件費データ、Qualtricsの従業員エンゲージメントスコア、外部システムにあるその他の関連データに至るまで、人的資本経営に関連するあらゆるデータを収集、統合し、SAP Analytics Cloudで可視化する仕組みを提供している。

図1:人的資本情報開示向けのテンプレート 出典:SAPジャパン
図1:人的資本情報開示向けのテンプレート 出典:SAPジャパン [画像クリックで拡大]

 そして、SAP Analytics Cloudでは、幅広いSAP製品のデータを集約したレポートを効率的に利用できるよう、24業種・45業務の定義済コンテンツを提供している。システム横断的にデータを集めて可視化する人事向けのテンプレートもそのうちの1つだ。また、米国証券取引委員会が「人的資本の情報開示」で定めた開示項目の一部についても、SAP SuccessFactorsの導入企業向けにはテンプレートを無償で提供している。

 複数のアプリケーションから正確にデータを抽出し、分析モデルを作成するのは人事だけでは難しい。その負担が減るのは助かるが、データ可視化自体に大きな価値はない。可視化は単なるトリガーに過ぎない。レポートを見て、特定のKPIに影響を与える因子やプロセスにおけるボトルネックを抽出し、改善の方向性を見出すことの方がもっと重要だ。

SAPの革新的AI機能:生成AIブーム以前からの提供

 AIの使い所も改善機会の発見にある。佐々見氏によれば、以前からSAPが提供して来た人事分野におけるAI機能は、大きく4つある。まず、インサイトの検索結果を返す「Search to Insight」。例えば「残業時間の推移を見たい」と入力すると、該当結果を返してくれる。次に、インサイトの自動生成を行う「Smart Insight」がある。あるKPIを部署ごとに比べた時、特定の部署だけ極端に低かったとする。もしかすると、特定の製品の売上低迷が影響しているかもしれない。Smart Insightは、影響している要因を「これでは?」と教えてくれる。「Smart Discovery」は、調べたい項目を入力するだけで、ダッシュボードを提案して作ってくれるもの、「Smart Predict」は、予測分析の機能を提供するものになる。人件費の推移のような過去のデータから向こう3年の予測を行う用途の他、特定のスキルを持つ人が活躍できそうなポジション、退職の予兆などを知りたいときに重宝する。

図2:改善機会の発見に役立つAI機能 出典:SAPジャパン
図2:改善機会の発見に役立つAI機能 出典:SAPジャパン [画像クリックで拡大]

 これらのAI機能はディープラーニングのテクノロジーを使うもので、何かを調べる時間を極力減らし、改善機会の発見と解決策を考えることに注力してもらいたいと考え、強化してきたものになる。解決策の方向性が見えてきたら、次のステップはプロセスの変更だ。ここで問題になるのが、プロセスの変更に合わせてシステムも変更できるかだ。人事に限らず、企業のプロセスはITの上で動いている。プロセスのシステムを変えなければならないことも出てくる。そこでSAP SuccessFactorsでは、プロセスの継続的な改善ができるような基盤を提供し、その上で柔軟にプロセスの追加や変更ができるようにしている。

 データに基づきプロセスを改善するとなると、気になるのは人事データの扱いだ。佐々見氏は「モデルのトレーニングでは、多くのお客様のデータを使わせてもらっているが、あるお客様のデータを別のお客様が使うわけにはいかない。基本的には賢くなったモデルを使ってもらいつつ、各社のデータだけで活用してもらうようにしている」と話した。

 この方針は、生成AIの登場以降も変わらない。SAP SuccessFactorsのAI戦略は、複数のAIを組み合わせてそれぞれの人事プロセスに最適なものを提供するものだ。すでにAI先行企業が出している優れたものがある分野では、パートナーが提供する世界最高水準のものを使ってもらう。一方で、人事はデータの秘匿性を担保することが重要だ。その意味で、データを安全に使ってもらうための仕組みはSAP自身で製品の中に組み込む。

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スキルベース雇用を強化するSAP SuccessFactorsのAI機能の展開

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この記事の著者

冨永 裕子(トミナガ ユウコ)

 IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタン...

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