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2024年秋号(EnterpriseZine Press 2024 Autumn)特集「生成AI時代に考える“真のDX人材育成”──『スキル策定』『実践』2つの観点で紐解く」

IT人材不足に立ち向かう

デジタル人材育成のカギは「スキルの可視化」。旭化成/味の素/資生堂がDSSをベースにした活用術を披露

IPA「デジタル人材育成情報共有会」レポート

 DX推進を担う人材育成を目的に、情報処理推進機構(IPA)は2022年12月に「デジタルスキル標準(以下、DSS)」を発表した。それ以降、IPAには「デジタル人材育成の事例を紹介してほしい」「DSSをどう活用すればよいのか」といった声が相次いで寄せられたという。そこで、デジタル人材センター 人材プラットフォーム部は2024年1月26日、デジタル人材育成情報共有会を開催。DSSを活用してデジタル人材育成に取り組む企業を代表し、旭化成、味の素、資生堂インタラクティブビューティーの担当者が登壇し、各社の取り組みを発表した。

旭化成:個人のスキル状況の可視化を横展開

 まず登壇した旭化成 上席執行役員 兼 デジタル共創本部 DX経営推進センター センター長の原田典明氏は、2022年度から人事戦略に「多様な“個”の終身成長+共創力で未来を切り拓く」を掲げていると話す。「終身成長」とは、年齢に関わらずいくつになっても成長し続けるべく、自律的なキャリア形成やマネジメント力の向上に取り組むことだという。

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旭化成 上席執行役員 兼 デジタル共創本部 DX経営推進センター センター長 原田典明氏

 同社はメンバーシップ型雇用が基本だが、専門性の高い人材は役職にとらわれない別処遇にする「高度専門職制度」を導入している。「エグゼクティブフェロー」では執行役員相当の待遇だという。対象者は社内に公表しており、同社のDXの中心を担っている。

 旭化成ではデジタル変革の成功要因に「人」「データ」「組織風土」の3つを定義。その上で、同社のアプローチのキーワードは「全員参加」×「現場主導」×「共創」だとする。デジタル共創本部の約300人がリードしながら、現場のプロ人材を育成していく考えだ。2024年度末までにプロ人材を2,500人育成することを目指している。

 人材施策の中で重点的に取り組むのが「旭化成DXオープンバッチ」だ。独自に定義した5段階のオープンバッチをもとに、全社員がレベル3に達することを掲げる。レベル3まではeラーニングを基本に、主体的に学習して取得することを推奨しているという。レベル4以上はデジタルプロフェッショナル人材として、実際に現場で課題解決を行うことになる。具体的なカリキュラムは以下の通り。これらのほとんどを内製していると言い、中にはハンズオン型のものも含まれる。2023年10月には生成AI関連も追加するなど、状況に応じてアップデートもしていると話す。

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出典:情報処理推進機構

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 また、教材作成部署を中心に「データ分析」「ローコード/ノーコード」「生成AI」といった分野に特化したコミュニティを運営し、実践に即したスキルを継続的に得られる仕組みも整えている。

 さらに同社は、多様な人材のスキルを一定基準で可視化すべく、DSSを活用しているという。DSSのIPAロール分類をベースに、旭化成のビジネスや事業に合わせて自社がより強化したいポイントなどを盛り込み、独自に16種類のロールを定義した。「メリハリをつけた設計をしている」と原田氏。ロールに応じたスキルを37種類に分解し、それらを6段階で評価する仕組みにした。

 個人のスキル状況を見える化することで、現在のスキル状況の把握はもちろん、今後伸ばしていくべきスキルを明確にする狙いがあるという。組織ごとに集約し、組織の人材戦略立案にも活用していきたいとした。

 原田氏は「2023年はこの定義まではうまくいった。しかし、実装するとなると評価が難しく、そこに手間が掛かっている」と話す。2023年度中に、デジタル共創本部内での準備を終え、2024年度から本格運用を開始し、全社展開していく予定だとした。

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出典:情報処理推進機構

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この記事の著者

小山 奨太(編集部)(コヤマ ショウタ)

EnterpriseZine編集部所属。製造小売業の情報システム部門で運用保守、DX推進などを経験。

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