日本企業の生成AIに対する姿勢は「米国とEUの中間」
生成AIの導入が世界中の企業で進んでいるが、日本とそれ以外の国・地域では、その様相に何か違いはあるのだろうか。あるいは、産業や業種ごとに異なる傾向があるのだろうか。サマー氏はあくまで個人的な見解としつつも、現在の動向について説明した。
まずは米国。米国企業は全体的に生成AIの導入に積極的で、予算も社内で十分に確保されている場合が多い。ただ、グローバルで事業を展開する企業は規制や法律への対応に慎重になる傾向があるため、まだ社外向けの製品化はせず、社内での利用にとどまっているケースが多いという。Qlikの社内でも、プライベートでLLM(大規模言語モデル)が利用されてはいるものの、それを外部向けの製品にはしていないようだ(取材時点)。
チャットボットをはじめとする顧客対応サービスは、既に様々な企業が独自サービスを開発して展開している。ただ、意外にも多くの企業は「生成AIによるサービスは、まだまだ顧客満足度において課題がある」という見方をしているとサマー氏。さらにEUの企業では、早期から敷かれた法律や規制が障壁となり、技術導入が遅れている様子も見られるという。
では、日本はどうだろうか。サマー氏は、「日本企業の生成AIに対する姿勢は、米国とEUの中間のような立ち位置だと感じます。セキュリティやプライバシーには敏感な一方、『生成AIへの躊躇が、競争力で遅れをとることにつながるのでは』と懸念しており、現在議論が進んでいる状況ではないでしょうか」と分析した。
生成AIの導入においては、初期から経営トップがリーダーシップをとり“トップダウン”で導入を推進している企業と、一部の社員やチームが起点となって始まる“ボトムアップ”での導入を進めている企業の2パターンが主に見られる。正しいアプローチはどちらか。
トップダウンかボトムアップかは、それほど固執する問題ではない……これがサマー氏の答えだ。「生成AIがどう優れた技術なのか、どう活用するのが自社にとってベストなのかを、組織の誰もが理解することが重要です。それさえクリアできれば、トップダウンでもボトムアップでも、きっと成果を出すことができるでしょう」と同氏は述べた。