Nutanixは現地時間5月20日から23日にかけて、年次イベント「.NEXT」をスペイン バルセロナにて開催している。20日の基調講演には、同社 President & CEOのRajiv Ramaswami氏が登壇し、同社の様々な新しい取り組みを発表した。
同氏は講演の冒頭、2030年における未来の話から始めた。「今日、アプリケーションの多くはVMベースで作られていますが、2030年までにはモダンなアプリケーションがあらゆる場所に存在するようになるでしょう。今後4年間で、アプリケーションの数は現在の2倍になると予想されています。こうした状況はモダンなアプリケーションによってもたらされるのです」とモダンアプリケーションの重要性を説いた。
また、こうした状況がAIでも起きていると指摘。「重要なのは、より早く対処することができれば、それが新たなスタンダードとなり、競争の優位性を獲得できるということ」だとした。同時に「厳しい予算の中でAIをどのように活用できるか考えている企業は多いでしょう」と述べ、クラウドコストの削減、セキュリティの確保やコンプライアンスへの対応も考慮しなければならないと警鐘を鳴らした。
このような状況を踏まえ、Nutanixは企業が新しいアプリケーションを構築し、アプリケーションポートフォリオをどう扱うのか判断していくための手助けを行っていくという。
「我々はイノベーションに投資するエンジニアの企業です。パブリッククラウドやエッジのあらゆる場所で使える単一のプラットフォームを構築し、ハードウェアから始まるスタックの各レイヤーで常に自由な選択肢を提供してきました」(Ramaswami氏)
続けて同氏は、Nutanixの最新情報について「インフラストラクチャを最先端ハイブリッドクラウドへモダナイズする」「一度でモダンなアプリケーションを構築し、どこでも実行できる」「エンタープライズAIを実現する」という3つの観点から紹介した。
まず1つ目のハイブリッドクラウドのモダナイズに関しては、新たな2つの取り組みを発表。そのうちの1つがDell Technologiesとのパートナーシップ拡大だ。この協業拡大によって、Dell TechnologiesはNutanix Cloud Platform(以下、NCP)と同社のサーバーを組み合わせた統合型ハイパーコンバージドアプライアンスを提供するとした。さらに、エコシステムの柔軟性と選択肢への需要に対応するためのソリューションとして「Nutanix Cloud Platform for Dell PowerFlex」も発表した。
続いて、同社のハイパーバイザー「Nutanix AHV(以下、AHV)」の新たな導入オプションとプログラムが発表された。企業が現在利用しているレガシーハイパーバイザーからの移行をサポートするための新たなAHVサーバー機能を現在開発中だという。これにより、エンタープライズ企業は既存の導入済みサーバーを再利用する形でAHVを実行できるとのことだ。Ramaswami氏は「これが実現すれば、ハイパーバイザーに直接接続して動作する最初の外部ストレージプラットフォームになるでしょう」と期待を寄せた。
次に同氏は「一度でモダンなアプリケーションを構築し、どこでも実行できる」環境の実現について話題を移し、コンテナベースのモダンアプリケーションの管理を簡素化する「Nutanix Kubernetes Platform(NKP)」を発表した。
これは同社が2023年に買収したD2iQのKubernetes管理技術を進化させたものだという。Nutanixは、2023年5月にあらゆる環境でアプリケーションを実行でき、複雑なアプリケーションの書き換えをシンプルにすることを目指した「Project Beacon」を発表しており、NKPはこの取り組みの一環となる。
Sr. Director, General Manager of Cloud NativeのTobi Knaup氏は同プラットフォームについて、「セキュリティからオブザーバビリティ、ネットワーキングまでのすべてをカバーする30以上のオープンソースコンポーネントで構成されています」と説明。エンジニアは、Cloud Native Computing Foundation(CNCF)準拠の包括的なクラウドネイティブスタックを通して、オンプレミス、ハイブリッド、マルチクラウドの環境でKubernetesクラスターをセキュアに管理するための一貫した運用モデルを得られるという。
さらに、3つ目の観点として挙げたエンタープライズAIの実現に向け、Hugging Faceとのパートナーシップおよび、NVIDIAとのパートナーシップ拡大を発表。これらの協業による成果として「Nutanix GPT-in-a-Box 2.0」を新たに提供することを宣言した。
Nutanix GPT-in-a-Boxは、モデルおよびデータストレージ用のNutanix ObjectsとNutanix Filesとの連携により、エンタープライズAIの採用を簡素化することを目的としたフルスタックソリューションだ。今回発表されたGPT-in-a-Box 2.0は、NVIDIAアクセラレーテッドコンピューティングとLLMのサポートを拡大しつつ、シンプルな基盤モデルの管理に対応。NVIDIA NIMマイクロサービスおよびHugging FaceのLLMライブラリとの連携機能を提供するという。GPT-in-a-Box 2.0の提供開始は、2024年度下半期中を予定しているとのことだ。
加えて「Nutanix AI パートナープログラム」も発表。同プログラムを活用することで、実環境向けのGenAIソリューションを提供するAIパートナーの大規模なエコシステムを活用できるという。パートナー各社は、NCPとNutanix GPT-in-a-Boxソリューションを利用し、AIユースケースを対象としたサードパーティおよび自社開発のGenAIアプリケーションの構築、実行、管理、保護を支援できるとした。初期パートナーは以下画像のとおり。
最後にRamaswami氏は「私たちはこの15年間、皆さんとともに歩んできました。そしてAHVは今年で10周年を迎えます。Nutanixはこれからも、お客様のジャーニーを支援し、成功を収めることができるように投資を続けています」と述べ、講演を終えた。
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