全18部門・月1,000人が利用するデータ基盤
MonotaROは、自ら間接資材の在庫を持ち、オンラインで販売するBtoBのEC企業だ。コールセンターや商品採用、物流、マーケティング、データサイエンス、ITといった業務とシステムを自社で開発・運用するフルスタックのECカンパニーと香川氏は紹介する。同社には、物流、マーケティング、香川氏が所属するプラットフォームエンジニアリングなど18の部門があり、社員は約800人(2024年5月時点)、そのうちの30%程度がエンジニア、デザイナー、データサイエンティストだという。
MonotaROのデータ活用を支えるのが、BigQueryを中心とするデータ基盤だ。ログ、基幹システムやECサイト、顧客行動ログ収集や検索といった内製システムデータなどのデータソースから集めたデータをBigQueryに置き、レポーティング、大規模データ処理、業務オペレーションなどのユースケースに合わせて、BIのLocker Studioなどのツールや、SQLやPythonで解析しているという状況だと香川氏は説明する。
そのようなデータ基盤を、全18部門・月に1,000人以上(社員の他、アルバイトや協力会社を含む)が利用している。クエリの実行数は月500万以上、1日にすると15万以上実行されている、と香川氏は話す。BIのLocker,Locker Studioは、約50万の利用があるとのことだ。
「一部の人が使える」から「全部署の多くの人が使える」まで
次に香川氏は、MonotaROにおけるデータ基盤の歴史を紹介した。
2000年に創業したMonotaRO、2010年ごろまでのデータ活用は、アナリストがエンジニアに基幹システムからの抽出を依頼してExcelやCSVなどで得て利用するというやり方だったという。2010年から2015年に販促基盤を構築、これにより一部の部署が積極的にデータを活用できるようになった。現在の基盤づくりが始まったの2016年。クラウドにデータ基盤を構築すべく、約1年かけてBigQueryを導入した。これにより、スキルがある人は使えるという状況に進んだ。
次はそのBigQueryを使える人を増やすべく、2018年~2019年はBigQueryの展開を進めた。そして、2020年からは全部署の多くの人が簡単に使えることを目的に、データサイロ対策としてのデータ管理、ツール側ではLookerなどを導入し、DWHの構築を進めた。
現在は、2023年にスタートしたシステムモダナイゼーションとアナリティクスエンジニアリングの展開を進めているところだ。これについて香川氏は、「システムをアーキテクチャレベルから見直すに当たって、データ分析やデータエンジニアとしての役割を担う私も入って、データを活用するためのシステム設計という観点から一緒に進めている」と説明した。
本題であるデータ活用の展開について、まず香川氏は、「データ活用能力」を縦軸に、「データ活用組織数」を横軸にとった図を示した。「縦軸と横軸で構成する四角の面積がどんどん大きくなることがデータ活用の展開」というのが、香川氏の考えだ。この四角形を大きくするために、MonotaROはまず縦であるデータ活用能力を伸ばし、次にデータを活用する組織数を増やす横に広げるというやり方をとった。