パロアルトネットワークスは、SASEソリューション「Prisma SASE 3.0」のローンチに際して、記者説明会を開催した。
同社 SASE事業本部 シニアディレクターの藤生昌也氏は、SASEが求められる市場背景として、5つの企業マインドの変化を挙げる。具体的に、コロナ禍のテレワーク実現に代表される「事業継続性」をはじめ、「クラウドファースト」「業務効率」「TCO削減」「デジタル化」とした。同社では、2019年から「Prisma SASE 1.0」を提供。2021年には、リモートアクセスVPNに加え、接続の可視化などを加えた「Prisma SASE 2.0」をリリースしている。しかし、昨今の課題として、藤生氏は「ITリテラシー不足」「情報漏洩」「SaaSアプリ低速」「セキュリティ人材不足」を挙げる。そこで、Prisma SASE 3.0では、そうした課題を解決する機能追加をしたと説明した。
具体的な機能については、パロアルトネットワークス Business Principal, SASE事業本部の和田一寿氏がデモを交えて解説した。和田氏はPrisma SASE 3.0の機能特長として、次の4点を挙げる。
その中でも特に強調したいのが、エンタープライズブラウザである「Prisma Access Browser」という。和田氏は「SaaSをはじめ、ブラウザを利用する時間が増えている」と指摘。続けて「ブラウザでないと閲覧できないデータも増えてきていることもあり、ブラウザ発端のインシデントが増えてきている」と話す。同社の調べによると、従業員がブラウザで費やす時間は約85%に上るとしている。
そのため、同社はブラウザをよりセキュアな状態にすべきだと考えたという。Prisma Access Browserについて、和田氏は「Chroniumuベースのため、Microsoft EdgeやGoogle Chromeと変わらない。情報漏えいが起きづらいだけでなく、ブラウザを使うだけで直接Prisma SASE基盤に接続できる」と強調した。
具体的な操作デモを行った。たとえば個人情報を扱うページを開くと、権限に応じて個人情報の部分のみモザイクがかかる機能や、閲覧しているユーザーや時間などの情報が入った透かし(ウォーターマーク)が表示される機能を紹介。こうした機密情報を扱うページではスクリーンショットを撮ってもグレーアウトとなる。和田氏は「外部に情報を持ち出させない。シンプルだが、強力なツール」と述べた。また、機密情報を含むファイルをダウンロードする場合は、Prisma Access Browser上でしか開けないように暗号化させているという。
ブラウザのため様々なデバイスに手軽にインストールでき、関連会社や契約社員などの情報漏えいリスクを低減するほか、SaaSやWebアプリの可視化と制御を実現していると話す。加えて、セキュリティに関するキッティング時間も削減でき、生産性向上にもつながるとした。
このほか、次のような機能も紹介された。
- AIを活用したデータセキュリティ:データ分類の精度を高める機能。LLMを活用した分類で、コンテキストを認識する機械学習(ML)モデルの強みと、LLMベースの自然言語理解を組み合わせることにより、MLの行動分析の精度を高め、機密データの保管場所と移動先を監視し保護するという
- アプリアクセラレーション:アプリ認識技術を活用し、あらゆるユーザーのアプリケーションを個々に高速化するSASEソリューション。インターネット経由でアプリケーションにアクセスする場合と比較して、アプリケーションの性能を最大5倍向上させるという。パロアルトネットワークスは、Amazon Web Services(AWS)、Slack、ServiceNow、Google、Zoom、SAPなど、主要なクラウドサービスプロバイダーやエンタープライズアプリケーションと連携して、アプリケーションの性能を向上させるとしている
なお、Prisma SASE 3.0およびアップデートされた機能は近く一般提供される見込み。Prisma Access Browserの提供開始は7月を予定しているという。
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