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“組織のハズレ値”が注目するDataikuによるAI革命──三菱電機とJ&Jのリーダーが展望を語る

「EVERYDAY AI SUMMIT TOKYO」基調講演レポート


 「今日、ここに来てくれている“組織のハズレ値”な皆さんが、組織の誰もがデータから価値を生み出すことを示すことができれば、日本でも必ずAIによるイノベーションが生まれてくる」──7月19日開催されたDataiku Japan主催の「EVERYDAY AI SUMMIT TOKYO」の基調講演の冒頭で、同社 取締役社長 カントリーマネージャー 佐藤豊氏はやや煽り気味のフレーズで聴衆に呼びかけた。2013年にフランスで創業したDataikuは、GE・アビエーションやモデルナ、BNPパリバなどを顧客に抱え、グローバルで急速に拡大しているAIカンパニーだ。もっとも日本市場でも導入が徐々に始まっているものの、グローバルの勢いにはまだ追いついていない。国内外を問わず、数多くのベンダーが日本企業への導入を狙うなかにあって、ハズレ値の人々はなぜDataikuに興味をもったのか。本稿ではカンファレンスに登壇した三菱電機 DXイノベーションセンター長 朝日宜雄氏およびジョンソン・エンド・ジョンソン ビジョンケアカンパニー 代表取締役プレジデント 森村純氏のプレゼンから、日本企業のハズレ値な人々がAIによるイノベーションを実現する可能性を見ていきたい。

三菱電機:次の100年を支えるデジタル基盤「Serendie」

 2021年に創業100周年を迎えた三菱電機は“次の100年先”を見据えた経営戦略の一環として「循環型 デジタル・エンジニアリングによる社会課題解決」を掲げている。これまでの製造業の王道であったプロダクト中心でウォーターフォール型のモノづくりだけではなく、製品に対する顧客のコメントやフィードバックをアジャイルに反映し、顧客のニーズを持続的かつリアルタイムに把握したサービスを提供する。この変革を実現するために同社が2024年5月から活用を開始したデジタル基盤が「Serendie(セレンディ)」である。同社のDXイノベーションセンターがSerendieの構築と運用を中心となって行い、社内外のパートナーと共創しながらデータをもとにした新たな価値創出に取り組んでいるという。なおSerendieとは「Serendipity(偶然のめぐりあいがもたらすひらめき)」と「Digital Engineering(デジタルエンジニアリング)」を組み合わせた造語だ。

 「かつては昇降機、空調、家電、電力など特定の分野の製品を作って、それぞれの顧客に売っていればよかったが、カーボンニュートラルなど社内横断的に取り組まなければならない分野では、サイロ型の事業モデルでは限界がある。全社横断であらゆる事業部門から収集したデータを集約し、社内外の多様な人材がSerendieを活用することで、様々な知恵や技術が集まり、新たなサービスソリューションの提供が可能になる」(朝日氏)

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三菱電機 執行役員 DXイノベーションセンター長 朝日宣雄氏

 Serendieは「技術基盤」「共創基盤」「人財基盤」「プロジェクト推進基盤」という4つの役割を担っているが、やはり最も注目されるのは、循環型 デジタル・エンジニアリングの中心となる技術基盤だ。この技術基盤は各事業部が提供するソリューション(電力事業者向けソリューションパッケージ「BLEnDer」、スマートシティ/ビルIoTプラットフォーム「Ville‐feuille」、IoTライフソリューションプラットフォーム「Linova」など)から収集したデータを横断的に集約し、API連携を介してデータ分析やデジタルサービス提供を行っている。具体的には以下の4つの基盤とサービスから構成されている。

  • データ分析基盤:Dataiku、dotData、Tableau、PowerBI、Snowflake(データプール)
  • WebAPI連携基盤:MuleSoft
  • サブスクリプション管理基盤:Zuora
  • お客様情報基盤

 ここで朝日氏はSerendieのデータ分析ツールの一つとして採用されているDataikuの活用事例として「熱供給事業者向けソリューション」を紹介。熱供給事業とは、一定地域のビルや建物に対して冷房や暖房のための冷水/温水/蒸気を1ヵ所(または数ヵ所の熱発生所)からまとめて供給するエネルギー供給事業で、熱供給事業者にとっては電力と熱のエネルギーコスト削減は最も重要な課題の一つだ。冷水や温水は作りすぎるとコストがかさみ、逆に製造を減らしすぎると突然の需要増に応えられなくなる。

 三菱電機は熱供給事業者に対し、エリア全体の需要予測と運転計画を最適化する熱エネルギーマネジメントシステムを提供しているが、Serendie上でDataikuを活用して分析を行ったことで、エネルギー需要予測モデルの構築および需要家(ビルや施設)ごとの特性可視化に大きな改善が見られたという。モデル構築においてはまず時刻/曜日/休日/気温といった説明変数(結果に影響を与えている要因を示す変数)を様々に変えてモデルを作り、最も精度が高くなる組み合わせを選定、さらにその予測結果について顧客(熱供給事業者)とディスカッションしながらモデルの改良をスピーディに重ねていった。また需要家ごとの特性(熱取得量の変化など)を顧客の目の前でグラフ化し、各需要家に対する改善方法への気付きをその場で得られるようにしている。

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 その結果、1年分のデータ分析から提案書作成までのプロセスをわずか20営業日で実施することができたという。朝日氏は「通常、製造業は2、3年かけて1つのソリューションを作るが、Dataikuを活用したことで非常に速く作成することができた」とDataikuによるスピーディな分析を高く評価している。

 三菱電機は現在、横浜に「Serendie Street」という循環型 デジタル・エンジニアリング"を加速するための拠点を置き、「様々な人やデータ、技術が偶発的に出会って熱量を生み出し、未知なる価値を創出する実験とひらめきの共創空間」の構築を進めている。その一環として7月にはSerendieを活用した鉄道向けデータ分析サービス[1]も開始している。一つの部屋で顧客(鉄道事業者)とデータアナリストが議論をしながら次から次へとモデルを作り、その場でグラフを表示しながらスピーディに分析を重ねていく。

 その光景は明らかに今までの製造業では見られなかったものだ。「Serendie Streetでは三菱電機が大きく変わろうとしている姿を見ることができる。その変化のサイクルを速く回してくれる存在がDataiku」と朝日氏。変化する企業をAIのスピードが後押ししているケーススタディとして注目される。

[1]三菱電機「デジタル基盤『Serendie』を活用した鉄道向けデータ分析サービスの開始」(2024年7月11日)

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ジョンソン・エンド・ジョンソン:データサイエンス文化醸成のための3段階

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五味明子(ゴミ アキコ)

IT系出版社で編集者としてキャリアを積んだのち、2011年からフリーランスライターとして活動中。フィールドワークはオープンソース、クラウドコンピューティング、データアナリティクスなどエンタープライズITが中心で海外カンファレンスの取材が多い。
Twitter(@g3akk)や自身のブログでITニュース...

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