2024年9月5日、セールスフォース・ジャパンは、「Salesforce Data Cloud(以下、Data Cloud)」に係る記者説明会を開催した。
冒頭、CRMにおけるデータ活用に関する課題について、データを蓄積するだけでなく日々活用できるかが焦点になっているとして、セールスフォース・ジャパン 製品統括本部 プロダクトマネジメント&マーケティング本部 シニアマネージャー 前野秀彰氏が登壇。「業務部門がIT部門に都度依頼するのではなく、日常的に多くのソリューションから生まれるデータをいかにCRMなどにつなげられるのか。そこが重要だ」と指摘すると、そこを支えるものが同社のData Cloudであるとした。
Data CloudはデータレイクやWebアプリケーション、クラウドストレージなど、多様なデータソースからデータを取り込み、構造化されたデータモデルにマッピングしていくことで“統合顧客プロファイル”を作成。これを基にしてAIによる予測、BIによる分析などに利用できるという。
「生成AIモデルにビジネス文脈を与えるためには、プロンプトへのグラウンディング、ファインチューニングなどが考えられる。一長一短だが、低コストかつ出力結果を制御しやすいという観点において、セールスフォースではグラウンディングのアプローチをとっている」と前野氏。Data Cloudでは、データソースに適宜クエリを投げてデータを取得・格納する「ゼロコピーインテグレーション」、非構造化データのチャンク、セマンティック検索などをローコードで行うための「Einstein 1 Platform」などの機能追加が行われており、RAGを用いたユースケースも増えているという。
イーデザイン損害保険もData Cloudを活用している1社だとして、同社 取締役 IT企画部長 兼 ビジネスアナリティクス部長 須田雄一郎氏が登壇。「自動車保険のマーケットが縮小していく中、価格競争によるビジネスモデルにおける課題、レガシーシステムからの脱却も契機となってインシュアテック保険会社への変革を進めており、2021年に『&e』をリリースした」と説明を始めた。デジタルネイティブ層をターゲットとして、すべての手続きをスマートフォンで完結させたり、センサーデータを分析・診断することで安全運転を促したり、行政・他社のデータを組み合わせた新サービスのリリースを行ったりと、事故のない社会実現に向けた取り組みを推進している。
そうした動きにあわせて、同社ではシステムをモダナイズしており、基幹システムと周辺システムをAPI連携によってデータをやり取りできるようにするなど、フルクラウドかつ疎結合のアーキテクチャを意識して構築したという。「データの収集から活用までをシームレスにする、その1ピースになると考えてData Cloudを導入した」と須田氏。先述したような新サービスをリリースする中、顧客に利用を続けてもらうことが肝要であり、CX向上にはパーソナライズされたコミュニケーションが必要になっていたという。
Data Cloud導入前から細やかなコミュニケーションをとるため、CRMに蓄積されたデータを利用していたもののWebやアプリケーション、運転に係るログデータ(Tripデータ)を活用できておらず、異なるデータソースのハブとして一元管理する仕組みをData Cloudが担っているとする。実際に、顧客・契約データとTripデータを掛けあわせることで、安全運転スコアが満点の対象者に特典付きのメールを配信することで、クリック率が10%から24%と倍増するような成果が上がっているという。「Data Cloudは導入するだけでもメリットはあるが、活用するためには体制構築、セールスフォース製品との連携などが大切だ。当社では、個別最適を排除したシステムアーキテクチャが活きているだけでなく、『&e』にあわせてデータ活用とAIを推進するCoE組織『ビジネスアナリティクス部』を組成していたこと、部署をまたいでコミュニケーションを一元管理する『CX推進部』を設けていたことなど、これらがData Cloudを活用する上でのドライバーになっている」と説明する。
現在、同社では電話音声やチャットなど、自然言語データの活用を進めており、統合データ分析基盤の整備も行っている最中だという。その上で、今後はData Cloudを活用しながら、AIによる不正請求の検知、事故受付、デジタル接客などを実現していきたいとした。