Salesforceの価値観を体現する「’Ohana Floor」
「私たちのビルはただの建物ではなく、我々の文化と価値観そのものです」──これはSalesforce 会長 兼 CEOのマーク・ベニオフ(Marc Benioff)氏が同社が展開するオフィスビル「Salesforce Tower」について語った言葉である。Salesforce Towerは米サンフランシスコの本社をはじめ、2024年10月時点で世界9ヵ所に存在する。どのロケーションのSalesforce Towerも従業員の働きやすさやサステナビリティにフォーカスした同社独自のオフィスデザイン基準「Salesforce Design Standards」に基づいて設計されており、床材から空調設備まですべてその指針に従って選択する。また、社員のニーズを定期的に把握し、最新のテクノロジーやサステナブルな素材も取り入れながら、随時、デザインスタンダードの見直しが行われているという。
そしてSalesforce Towerの最上階には必ず「'Ohana Floor(オハナフロア)」と呼ばれる広々とした空間が用意されており、各ロケーションの独自性を活かしたデザインとなっている。2022年2月に東京・丸の内にオープンした「Salesforce Tower Tokyo」は世界で6番目、アジアでは初となるSalesforce Towerだが、22階に位置するオハナフロアからは皇居をはじめとする東京の中心部を一望でき、フロアの中央には和室と日本庭園が設えてある。また、デザイン標準に則り、専任のバリスタやパティシエがサーブしてくれるバーや最先端のオーディオビジュアルシステムも備えている。日中はすべての従業員に開放されており、同社を訪問した顧客やパートナーも、従業員と一緒であれば利用することが可能だ。なお夜間や週末は、Salesforceの取り組みに賛同する非営利団体や慈善団体の利用も可能となっている。
2024年9月に米サンフランシスコで開催されたSalesforceの年次カンファレンス「Dreamforce 2024」の取材にともない、幸運にもSalesforce Tower San Franciscoのオハナフロアを訪問することができた。61階に位置するオハナフロアからの眺望は圧巻で、最大250名収容可能な広さを誇る。だが前述の通り、基本的なデザインコンセプトはSalesforce Tower Tokyoと同じで、社員同士のつながりやSalesforceの価値観、環境への配慮や社会貢献へのコミットメントを打ち出した空間づくりを徹底している点が印象的だった。
ハワイを深く愛することで知られるベニオフ氏は、ハワイで学んだ「オハナ」というコンセプト──血縁関係以外の人々も含んだ、より深い絆で結ばれた「家族」という名前を世界各地のSalesforce Towerの最上階に与えた。オハナはSalesforceを象徴する価値観でもあり、従業員とその関係者が集うオハナフロアはその価値観を体現する場所といっていい。360度に開けた総ガラス張りの眺望と、世界中から訪れた様々な人々が集う広々とした空間は、そこにいるだけで世界がつながっていることを実感させる。「世界をより良くする」を掲げるテクノロジーベンダーは多いが、核としている価値観を伝える場所をもっていることはSalesforceの大きな強みだろう。