企業内のIT利用における問題とは?
業績が低迷する経済環境において、企業はITによる「生産性向上」、「コスト削減」、「経営改革」といった期待が一層高まっている。このような業務システムの課題解決やコスト削減の要求から、最近のトレンドとしてはSOA(Service Oriented Architecture)や、クラウドコンピューティングなどが注目されている。
確かにSOA は、アプリケーションの機能をコンポーネント化し必要な機能だけを組み合わせるアーキテクチャは変化にも柔軟に対応できる有効なテクノロジーであり、クラウドコンピューティングにいたっては、これまで自社で負担してきたシステムの開発・維持・運用にかかるコストを大幅に削減できる可能性がある。しかし、現状の課題はもう少し別の側面にあるのではないだろうか。例えば、電子メールやグループウェアにより社内のコミュニケーションや情報共有が促進されているはずであるが、問題発生時のほとんどにおいて“コミュニケーション不足”または“情報不足”といった要因が指摘される。
以下の株式会社アスキー・メディアワークス アスキー総合研究所による企業内の情報活用状況調査結果をご覧いただきたい(図1)。この調査では、1,000人以上の従業員をもつ企業の正社員で、グループウェアまたはナレッジマネジメント関連製品を利用しており、かつ情報システムや情報共有に関心のある人を対象にアンケート調査を行った。(有効サンプル数:526票、調査時期:2009年6月下旬〜7 月上旬)
「情報が担当者の中に留まり会社の資産になっていない」(43.5%)といった情報が属人化している問題や、「過去の経験が活かせていない」(41.1%)といった業務に付随するノウハウが蓄積・共有されていないことが覗える。また、「情報が多すぎて、処理しきれない」(39.5%)以下は、電子メールに依存した業務コミュニケーション/コラボレーションの課題が浮き彫りになっている状態が見て取れる。表1には示していないが職種別で調べた結果によると、営業・販売では「過去の経験が活かせていない」(53.7%)、「情報が多すぎて、処理しきれない」(50.7%)、「顧客対応など情報が共有できていないためバラバラな対応になる」(41.8%)などの割合が他の職種に比べて高い。経営企画・事業企画では「必要に応じて見れば済む情報までメールで送られる」(50.0%)、医師や法務など専門職では「事業に影響を与えるようなリスク管理をサポートする情報がない」(22.5%)が、他の職種よりも多く見られる。
つまり、いくらSOA によりアプリケーションの機能を改修しても、またクラウドコンピューティングにより情報システムのコストを削減したとしても、これらの課題の根本的な解決にはならないのである。