AIは対話型アシスタントから自律型エージェントへ
セールスフォースは、企業活動のAIによる変革では、第一の波「予測AI」、第二の波「生成AI」を経て、「汎用AI」に至る過程で第三の波「自律エージェント」を経験することになると予測してきた。
もし、今の組織の中の労働力(Workforce:ワークフォース)に何も制限がなかったらどうなるか。無限の成長を期待するが、どんなに生産性を高めても、既存の労働力でできることには限界がある。顧客の期待は高まる一方で、昨今の採用環境下では現場の希望するようには増員が進まず、従業員たちはしばしば膨大な業務に忙殺されている。
このギャップを埋める潜在力を持つのが、AIである。デジタルの世界に限界はないが、対話型のAIアシスタントではこの現状を解決することは難しい。基調講演に登壇したマーク・ベニオフ氏(Salesforce会長 兼 CEO)は、イベントに先立ち現地時間9月12日に発表した「Agentforce」が従業員1人ひとりに力を与え、企業がより多くのビジネス成果を得られるように労働力を拡張するものである点を強調した。
Agentforceは、営業向け、カスタマーサポート向け、マーケティング向け、コマース向けなど、Customer 360アプリケーションの機能を拡張する自律型AIエージェントを提供するツールスイートである。
ベニオフ氏に続いて登壇したクララ・シャイ氏(Salesforce AI CEO)は、セールスフォースが考えるエージェントとは何かを「1. 役割」「2. データ」「3. アクション」「4. チャネル」「5. 信頼&セキュリティ」の5つの観点から説明した。
まず、役割とは、どんな仕事をAIエージェントにやらせるかを決めることだ。たとえば、Sales Cloudを使用している場合、SDR(Sales Development Representative)やAE(Account Executive)、Service Cloudの場合はコールセンターのオペレーターなどが考えられる。次のデータは、AIエージェントがどのデータを参照するかを決めることだ。Data Cloudでは、ユーザーが企業内にあるすべてのデータを1つのプラットフォームに集約し、簡単にアクセスできる。2024年10月からは、非構造化データのうち、音声および動画のサポートが始まることが明らかになった。続く、アクションは、AIエージェントにどんな能力を持たせるかを決めること。チャネルは、顧客がAIエージェントと対話する場所を決めることだ。メール、プッシュ通知、ソーシャルメディアなどを指定できる。
最後の信頼とセキュリティを担保するのが「Einstein Trust Layer」であり、データプライバシー機能の他、AIエージェントに許可する操作、許可しない操作を定義するガードレール機能を利用できるようにした。
セールスフォースは、この5つを満たしたAIエージェントをスクラッチで構築するオプションと共に、Service AgentやSales Agentをはじめとする、すぐに利用可能なAIエージェントも提供する。Service CloudおよびSales Cloud向けAgentforceは、2024年10月25日から提供を開始するが、日本でのService Cloud向けAgentforceの提供開始は2024年10月末を予定。Sales Cloud向けAgentforceの日本での提供開始時期は未定だ。
Agentforceの提供開始にともない、セールスフォースが提供してきたEinstein Copilot(旧Einstein GPT)は、対話型のAIアシスタントから、データを検索し、推論を行い、計画を立て、アクションを実行できる自律的なAIエージェントに変わった。