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2024年秋号(EnterpriseZine Press 2024 Autumn)特集「生成AI時代に考える“真のDX人材育成”──『スキル策定』『実践』2つの観点で紐解く」

EnterpriseZine PRESS 電子版 ~2024 Autumn~

「自社に合った5つのDX推進人材でスモールスタートを」IPAに訊く、事業に生成AIを組み込む術

「目的を再確認した上でDSSを参考に」デジタルスキル標準の改訂者が訴える

 多くの企業が“DXを推進する人材”の育成や採用に取り組み、そして苦労しているであろう。昨今では生成AIが爆発的に普及し、DX推進においても生成AIを含む新しい技術の活用は避けて通れない時代になっている。このような情勢を踏まえ、経済産業省と情報処理推進機構(IPA)は、全てのビジネスパーソンが身につけるべきスキルの標準「DXリテラシー標準」と、DXを推進する人材の役割や習得すべきスキルの標準「DX推進スキル標準」の2つからなる「デジタルスキル標準」を2022年12月に公開。その後、2024年7月にはDX推進スキル標準に生成AIに関する内容を追加し、「デジタルスキル標準 ver.1.2」として発表している。今回は、この改訂に携わったIPA デジタル人材センターの神谷龍氏に、生成AI時代を生き抜く人材に必要なスキルや人材育成などについて話を聞いた。

生成AIと“DX推進人材”を取り巻く実態と課題

 「デジタルスキル標準(Digital Skill Standard:DSS)」は、企業や組織がDXを推進するために必要な人材の役割やスキルを定義しており、2022年12月に「ver.1.0」、2023年8月には生成AIの急速な普及を受けて「ver.1.1」が公開された。この際、デジタルスキル標準の一部であるDXリテラシー標準が改訂されている。そして2024年7月には、DX推進スキル標準に生成AIに関する内容が追加され、共通スキルリストの学習項目例も追加・変更された。同改訂では、生成AIの特性、新技術への対応方法や行動の起こし方、生成AIに対する基本的な考え方、業務での活用例、生成AIを組み込んだ製品やサービスを開発・提供する際の行動例などが新たに追加されている。

 この改訂に携わったのが神谷氏だ。同氏はITベンダー企業にて人材育成に関わる業務に携わってきた経験を活かし、2023年4月からIPAに出向。デジタルスキル標準の改訂に関わり、特に生成AIに関する部分を担当している。他にも「デジタル時代のスキル変革等に関する調査」などの調査を担当し、アンケートやインタビューを通じて、個人の「自律的な学び」をテーマとした調査などを行っている。

独立行政法人情報処理推進機構 デジタル人材センター 人材プラットフォーム部
スキルトランスフォーメーショングループ 研究員 神谷龍氏

 生成AIを取り巻く企業の現況について神谷氏は「企業が生成AIをどのように活用し、業務プロセスやビジネスに取り入れていくかが重要なポイント」と語り、その背景としてIPAが行ったアンケート調査の結果をいくつか紹介した。

 まず、スキル変革に関する調査[1]を踏まえて人材需要の状況を見てみると、DXを推進する人材が質・量ともに「大幅に不足している」と回答した人は過半数に上る。2022年度までは従業員1,001人以上の大手企業での人材不足が目立ったが、2023年度の調査では中堅・中小企業でも不足しているという声が大幅に増加しているという。

デジタル時代のスキル変革等に関する調査(2023年度)全体報告書
(2024年7月22日、IPA)、11ページより引用
[画像クリックで拡大]

 別の調査[2]では、生成AIの導入状況について、従業員が1,001人以上の企業では試験利用まで含めると70%以上が導入しているものの、全体としては35%程度にとどまっている状況だ。また、生成AIを活用する上での課題として「リスクや効果の理解が不足している」と回答した割合は約半数に上る。「適切な利用を管理するためのルールや基準の作成が難しい」といった社内ルールの難しさを課題に挙げる人も40%以上見られる。

DX動向2024(データ集)』(2024年6月27日、IPA)、49ページより引用
[画像クリックで拡大]

 また、リスクやルールに関する回答に次いで「生成AIを活用できそうな業務がない」という課題も挙がっている。この結果を踏まえて神谷氏は「DSSの中で生成AIに関する明確な指針を示すことの必要性を再認識しました。生成AIを単に使うのではなく、何のために使うのかという視点に立ち返ることが重要。それがDXにもつながっていきます」と指摘した。

[1] 『デジタル時代のスキル変革等に関する調査(2023年度)全体報告書』(2024年7月22日、IPA)、11ページを参照

[2] 『DX動向2024(データ集)』(2024年6月27日、IPA)、43/49ページを参照

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本記事は2024年11月にEnterpriseZine編集部が発行したeBook『EnterpriseZine PRESS 電子版 ~2024 Autumn~』(PDF)に収録されています。EnterpriseZine会員登録の上、ダウンロードすることで、記事全文を読むことができます。

今回の特集テーマは「生成AI 時代に考える
“真のDX 人材育成”──『 スキル策定』『実践』2 つの観点で紐解く
」。本記事の他にも「旭化成が掲げる、4万人超の“全社員デジタル人材化”の現在地──着手から4年でようやく成果出始める」も含まれます。

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この記事の著者

森 英信(モリ ヒデノブ)

就職情報誌やMac雑誌の編集業務、モバイルコンテンツ制作会社勤務を経て、2005年に編集プロダクション業務とWebシステム開発事業を展開する会社・アンジーを創業した。編集プロダクション業務では、日本語と英語でのテック関連事例や海外スタートアップのインタビュー、イベントレポートなどの企画・取材・執筆・...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

竹村 美沙希(編集部)(タケムラ ミサキ)

株式会社翔泳社 EnterpriseZine編集部

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