生成AIと“DX推進人材”を取り巻く実態と課題
「デジタルスキル標準(Digital Skill Standard:DSS)」は、企業や組織がDXを推進するために必要な人材の役割やスキルを定義しており、2022年12月に「ver.1.0」、2023年8月には生成AIの急速な普及を受けて「ver.1.1」が公開された。この際、デジタルスキル標準の一部であるDXリテラシー標準が改訂されている。そして2024年7月には、DX推進スキル標準に生成AIに関する内容が追加され、共通スキルリストの学習項目例も追加・変更された。同改訂では、生成AIの特性、新技術への対応方法や行動の起こし方、生成AIに対する基本的な考え方、業務での活用例、生成AIを組み込んだ製品やサービスを開発・提供する際の行動例などが新たに追加されている。
この改訂に携わったのが神谷氏だ。同氏はITベンダー企業にて人材育成に関わる業務に携わってきた経験を活かし、2023年4月からIPAに出向。デジタルスキル標準の改訂に関わり、特に生成AIに関する部分を担当している。他にも「デジタル時代のスキル変革等に関する調査」などの調査を担当し、アンケートやインタビューを通じて、個人の「自律的な学び」をテーマとした調査などを行っている。
生成AIを取り巻く企業の現況について神谷氏は「企業が生成AIをどのように活用し、業務プロセスやビジネスに取り入れていくかが重要なポイント」と語り、その背景としてIPAが行ったアンケート調査の結果をいくつか紹介した。
まず、スキル変革に関する調査[1]を踏まえて人材需要の状況を見てみると、DXを推進する人材が質・量ともに「大幅に不足している」と回答した人は過半数に上る。2022年度までは従業員1,001人以上の大手企業での人材不足が目立ったが、2023年度の調査では中堅・中小企業でも不足しているという声が大幅に増加しているという。
別の調査[2]では、生成AIの導入状況について、従業員が1,001人以上の企業では試験利用まで含めると70%以上が導入しているものの、全体としては35%程度にとどまっている状況だ。また、生成AIを活用する上での課題として「リスクや効果の理解が不足している」と回答した割合は約半数に上る。「適切な利用を管理するためのルールや基準の作成が難しい」といった社内ルールの難しさを課題に挙げる人も40%以上見られる。
また、リスクやルールに関する回答に次いで「生成AIを活用できそうな業務がない」という課題も挙がっている。この結果を踏まえて神谷氏は「DSSの中で生成AIに関する明確な指針を示すことの必要性を再認識しました。生成AIを単に使うのではなく、何のために使うのかという視点に立ち返ることが重要。それがDXにもつながっていきます」と指摘した。
[1] 『デジタル時代のスキル変革等に関する調査(2023年度)全体報告書』(2024年7月22日、IPA)、11ページを参照
[2] 『DX動向2024(データ集)』(2024年6月27日、IPA)、43/49ページを参照
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本記事は2024年11月にEnterpriseZine編集部が発行したeBook『EnterpriseZine PRESS 電子版 ~2024 Autumn~』(PDF)に収録されています。EnterpriseZine会員登録の上、ダウンロードすることで、記事全文を読むことができます。
今回の特集テーマは「生成AI 時代に考える
“真のDX 人材育成”──『 スキル策定』『実践』2 つの観点で紐解く」。本記事の他にも「旭化成が掲げる、4万人超の“全社員デジタル人材化”の現在地──着手から4年でようやく成果出始める」も含まれます。
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