「Agentforce」の裏側を支える、Atlas推論エンジン
初日のメインキーノートに登壇したクララ・シャイ氏(Salesforce AI CEO)は、セールスフォースが考えるAIエージェントとは、下記5つの要素を満たしたものであると説明した。
- 役割
- データ
- アクション
- チャネル
- 信頼&セキュリティ
このうち、データを基にアクションを実行するまでの過程を、“人間と同様”に行うのが「Atlas推論エンジン」である。
講演のホストを務めたアダム・エヴァンス氏(Salesforce AI Platform Cloud担当SVP)は、「Atlas推論エンジンは、Agentforceの頭脳に相当する」と説明した。Atlas推論エンジンは、タスクを完了するためにどのようなアクションが必要なのか、どの順番で一連のアクションを実行するべきか……人間の思考や計画を模倣するように設計されているという。
その推論プロセスは、ユーザークエリの文脈を解釈することから始まる。その結果を踏まえた上で、クエリに対して最も関連性の高いデータを検索・取得する。その後、得られたデータを基にアクション実行の計画を策定。一連のアクションを実行し、タスクが完了すると、その計画の妥当性を評価し、次の類似クエリが発行されたときに備えて改良するというものだ。
エヴァンス氏は、オンラインで注文した商品がまだ届いていない場合を例に、Atlas推論エンジンの仕組みを説明した。
このような状況に直面した顧客は、カスタマーサポートに連絡し、問題に対処したいと考えるだろう。そして、エージェントとのやり取りは、顧客が名前と注文番号を伝えるところから始まる。このときAIエージェントは、人間のエージェントと同様に、連絡してきた人の「顧客プロファイル」や「注文履歴」のデータを参照し、該当する「注文番号を得る」というアクションを実行。そこで「商品在庫」のデータを参照し、結果を示す。さらに「企業ポリシー」のデータを参照し、対応方針の検索を行う。
このとき問題となるのは、注文した商品が届いていない場合の原因と、実行すべきアクションのバリエーションが無数に考えられることだ。
たとえば、原因は在庫切れではなく、輸送中だからかもしれない。荷物の紛失、盗難の可能性もあり得るだろう。従来は、考えられる対話と処理フローのすべてをコードで記述しなくてはならず、新しい対話が出てくるたびにコード追加を強いられていた。しかし、Agentforceでは、裏で動くAtlas推論エンジンの働きによって、AIエージェントがタスクの実行に必要なデータを得て、人間に代わって自律的な顧客対応ができるという。