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Salesforceが掲げた「Agentforce」、頭脳である“Atlas推論エンジン”の存在感

Dreamforce 2024で明かした、AIエージェントたる理由とは

なぜCopilotではダメなのか?

 ここでCopilotではなく、自律型のAIエージェントが出てくるのはなぜか。セールスフォースが「Copilotでは、企業のAI活用に付随する“隠れたコスト”の問題を解決できない」と考えたからだ。

 2022年末から始まった生成AIのブームでは、企業内活用のアイデアに関する議論があちこちで行われ、ビジネス成長に向けた大きな可能性が目の前に拡がっているかのように見えた。企業が目指すべきゴールは「カスタマーサクセスを実現すること」、それ自体は変わらない。そして、AIは従業員の能力を強化し、より良い顧客体験を提供し、より多くの収益を獲得できる仕組みを提供してくれる。

 ただし、Copilotベースでの仕組みを構築する際には、大きな困難をともなう。「企業におけるAI活用は簡単なことではない」と、登壇者の1人であるゲイリー・ブランデリア氏(Salesforce Product Management担当シニアディレクター)は指摘した。Copilotベースのアプローチでは、

  • データの分断という問題を解決すること
  • モデルを自社のビジネスに合わせてカスマイズすること
  • モデルの精度を高めるためのトレーニングを継続しなくてはならないこと
  • セキュリティ対策

これらすべてを企業自ら担うことが求められる。これは人員に恵まれている組織でも負担が大きい。メインキーノートでマーク・ベニオフ氏が訴えていたように、DIYでのAI構築・運用は現実的ではないのだ。

図3:企業のAI活用ジャーニーにおける隠れたコスト
図3:企業のAI活用ジャーニーにおける隠れたコスト
出典:セールスフォース
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 そこで代わりに採用したアプローチがエージェントベースである。セールスフォースは、企業がゼロから自律型エージェントを構築しなくても済むよう、Agentforceで3つの選択肢を用意した。1つ目が、すぐに利用できるよう、アプリケーションに組み込まれたエージェントコレクションである。

 Service Cloudであれば、カスタマーサポートを行う「Service Agent」、Sales Cloudであれば、見込み客に対応する「Sales Development Representative Agent」、商談前のロールプレイをサポートする「Sales Coach」、Marketing Cloudでは、マーケティングキャンペーンをサポートする「Campaign Optimizer」、Commerce CloudではECオペレーションをサポートする「Merchant」、BtoBの購買担当者の調達をサポートする「Buyer」、ショッピングアシスタントの「Personal Shopper」を利用できるようにした。

図4:すぐに利用できるものとして提供されるAIエージェントコレクション
図4:すぐに利用できるものとして提供されるAIエージェントコレクション
出典:セールスフォース
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エージェントのカスタマイズをノーコードで実施可能

 選択肢の2つ目は、エージェントの能力を拡張したり、スクラッチで新しいエージェントを構築したりできるように「Agent Builder」を用意したことだ。Agent Builderでは、あるトピックに対して指示を自然言語で記述すれば、アクションライブラリーを作成し、エージェントに実行させたいサブタスクを増やすことができる。

 たとえば、Service Agentに単独では処理できないリクエストが来た場合、人間に転送するようにしたい。その場合、まずはAgent Builderを立ち上げ、「注文管理」というトピックを選択する。トピックの管理要素は、指示とアクションの2つだ。まず、エージェントに正確に仕事をしてもらうためには指示が重要となる。今回は、「サービス担当者と話すことなく、お客様に請求内容を変更させないこと」、そして「顧客が注文を更新した場合は、新しい注文内容を確認すること」「注文情報を提供した後、この注文についてどんなお手伝いができるかを尋ねること」という指示を追加することにした。

 次のステップは、アクションを定義することだ。Agent Builderでは、これまでのSalesforceユーザーが蓄積してきたフロー、Apexコード、ユーザーのプロファイル、データアクセスを制御する権限セットなどをそのまま流用できる。既にある「注文詳細を検索する」「注文内容を更新する」という2つのアクションを追加し、「完了」ボタンをクリックするだけで、コードを1行も書くことなく、複雑なダイアログツリーを作成することもなく、Service Agentの能力を拡張可能だ。

 さらに、3つ目の選択肢として、セールスフォースはパートナーエコシステムを利用し、エージェントの能力を拡張できるようにした。この仕組みを利用することで、パートナーエージェントを持ち込むこと、パートナーアクションでエージェントの能力を拡張すること、「Zero Copy Partner Network」を利用してサードパーティーデータを利用できるようになる。

図5:Agentforceのパートナーエコシステム
図5:Agentforceのパートナーエコシステム
出典:セールスフォース
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 これら3つの選択肢のうち、どれか1つだけを選ぶのではなく、すべてを利用しても問題ない。どれを選んだとしても、新しいテクノロジーを学ぶことなく、AIをすぐに活用できる。高度な専門知識がなくても、Salesforce Customer 360アプリケーションを利用していれば、日常業務の延長線上でエージェントを利用できるのだ。

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パイロットユーザーの業務が「AIエージェント」で大きく改善

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この記事の著者

冨永 裕子(トミナガ ユウコ)

 IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタン...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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